アラン・シャペルへのオマージュ ポートピアホテル

今年の誕生日は、東京出張中のおぐけんからのデートの誘いを断り、神戸で過ごすことに。25日で31年の歴史に幕を閉じるアラン・シャペル神戸での最後の晩餐。セッティングしてくれたのは、神戸にお住まいの私が敬愛するステキなご夫妻です。

いつもプッシュするたびにワクワクしていたこのボタンも、間もなく変わってしまいます。

予約は18時半。少し早めに着き、ウェイティングサロンで、神戸市街の風景を眺めながら、しばらく待ち合わせ。

閉店が決まってからというもの、連日満席の賑わいが続いており、この日の昼間にはレストランウェディングも行われ、その慌しい空気がまだ店内に残留している中、ディナーのセッティングが急ピッチで進んでいるという状況。

ほどなく席に案内されましたが、料理人や給仕が十分な休息を取る間もなくそのままディナーになだれ込むのは、非常に危険。「高級店であってはならないこと」級の事態に不安がよぎります。

次々と訪ねてくる予約客に、広いダイニングホールに並ぶ席は、次々と埋まっていきます。顔馴染みの給仕たちが、かわるがわる顔を店に立ち寄ってくれますが、どこか余裕がなく、先を急いでいる雰囲気。

さて、この日の献立は、31年の間で親しまれてきた名レシピを中心に組まれた特別コースに、いくつかのアレンジを加えて仕立てられたスペシャルコース。

手元に配られた小メニューには、懐かしい料理名がずらりと並び、それぞれの料理と共に胸の奥に眠る記憶が次々に呼び覚まされていきます。

小魚とパセリ、セロリのフリチュール。シンプルな味ながら、シャンパンとよく合い、これをつまみながらメニューをじっくり眺めていた日々を思い出して。

ブルターニュ産オマール海老とピジョノー、トリュフのサラダ。テーブルサイドのワゴンで、丁寧にデクパージュ。

グリーンアスパラガスと赤座海老のフイユテ。春らしいさわやかな一皿。

キノコの軽いクリーム カプチーノ仕立て。本当に軽やか。

フォアグラをパンドエピスで包んで。リッチな風味。

琵琶マスのポワレ シャンパン風味のサヴァイヨンソース。マスは低温調理でふっくら半生に。それは風味を封じ込めるのが狙いだとか。私はオリジナルの香ばしさが好き。

ブレス産若鶏のヴェッシー包み フォアグラ風味の軽いクリームソース。こちらも鶏丸ごとを目の前でデクパージュ。「軽いクリームソース」という名前ながら、今日のソースでは最も濃厚なもの。

フランス産ナチュラルチーズのいろいろ。ワゴンで運ばれてくる中から好みで。今回はエポワス1種類のみ。

アヴァンデセール。フロマージュブランのグラスと栗のハチミツ。

デセールはジャスミンティー風味のクレームブリュレ ブリオッシュ添え。

料理は現代のシェフの味として見れば、十分に満足できる素晴らしいもの。ただ、調理法やレシピを現代風にアレンジしたという、本来は進化ととらえるべき点が、アランシャペルの味を懐かしむところに重きを置いた今回の晩餐に限ってはマイナスに働いたかもしれません。

一方、サービスには大いに不満が残りました。満席の高級店で十分に客をもてなすには、明らかに人数が足りません。いくらベテランでもムリなものはムリ。もうパンク状態です。

料理と料理の間もずいぶんと空き、グラスも長い時間、空になったまま。給仕の姿がホールから3分以上消えた時には、25日を待たずにもう閉店したのかと本気で思ったほど。

救いはワインの素晴らしさ。この日の6本は、ルイロデレールクリスタルロゼ2004、ギガルコンドリューラドリアンヌ2004、ギガルエルミタージュブランエックスヴォト2001、シャトーオーブリオン1998、ギガルコートロティラトュルク1998、ギガルコンドリューリュミネッサンス2003。

果てしない芳香の旅路は、歳を重ねて果たすべきことについて、よりよい決断を与えてくれたと感じています。