池谷友秀写真展ーOCEANー

ここのところロクなことがないので、視点を変えたいと思い、池谷さんの写真展へ!
行って大正解。ガツンと殴られたような刺激をもらって帰ってきました。

池谷さんにプロフィール写真を撮ってもらうようになって10年。滅多に顔をあわせる相手じゃないから、会うときは互いに進化していると感じあえるような人に撮ってもらいたいと思って選んだフォトグラファーが池谷さんです。この10年で池谷さんも私も海外へ大きく踏み出し、数々の経験を経て新境地を開き続けてきましたが、今回、池谷さんの斬新なクリエイティビティ触れ、私もこうしちゃいられないと焦りました。それほどスゴいです。

まず、写真は平面的なものと思い込んでいましたが、そうとは限らないと知りました。今回の展示作品の多くは、味わいのある木片に漆喰を塗り重ね、その上に最新技術のプリンタで写真を印刷するという手法を使っています。漆喰の凹凸や木自体の凹凸が見事な味わいを醸し、写真なのに絵画のような立体感があります。写真は経年劣化するというイメージがありますが、銀塩と違って顔料を使ったプリントなので、相当長く持つとのこと。いくらでも複製できるというイメージも、木片や漆喰に由来する唯一の個性によって覆されました。

それに、完成までの工程が複雑なことにも驚かされます。今回の写真展では制作過程の一部が公開されるというユニークな試みがあり、池谷さんと漆喰アーティスト小林奈生さんのふたりが、目の前で作品を仕上げていく様子を見ることができました。作業はゆったりとしたテンポで進み、私が見ていた2時間は、木片に漆喰を塗り込む作業の一部だけで過ぎてしまいました。まるで潮が満ちるの待つような時間の流れが心地よかったです。

会場のホテル&レジデンス六本木には、今回初めて足を踏み入れたのですが、古い建物を見事にリノベーションしてあり、とても雰囲気のいい空間です。フロント奥にあるレストランでひとりランチをしていたら、途中から池谷さんと奈生さんも加わって思いがけず楽しいランチに。「最近、写真の世界どう?」と尋ねると、気さくに感じたままを答えてくれる池谷さん。写真と音楽ではずいぶんと世界が違いますし、池谷さんと私もテイストはずいぶん違います。でも、芸術が直面していることってどこの世界でも同じのよう。それをどうやって乗り越えていくのか。池谷さんの今後の取り組みが、私の目の前に立ちはだかる壁を壊すヒントをくれるかもしれません。

そして、若き漆喰アーティストの奈生さんが、作業を終えるとすぐに道具を丁寧に整えている姿が印象的でした。聞けば厳しかった亡き師匠の教えだとか。若手が技術とともに考え方も受け継いでいるって素晴らしいなと思います。

池谷友秀写真展ーOCEANーの詳細はこちら