MENU PLAISIR ガストロノミー ジョエル・ロブション

恵比寿ガーデンプレイスの中心に佇む瀟洒な城は、日本を代表する美食の殿堂となるべく建てられ、今日も多くの客を迎えながらその使命を全うしています。

城の中は、地階1階から3階まで、ブーランジェリー、パティスリー、カジュアルレストラン、バー、プレステージレストラン、サロンが揃っており、そのいずれもが喧騒とは無縁の上品な空間です。

1階の「ラ ターブル ドゥ ジョエル・ロブション」ではガーデンにも客席を設けており、気候のいい時ならまたとない雰囲気で食事を楽しめることでしょう。

一方2階の「ガストロノミー ジョエル・ロブション」は、ジョエル・ロブション氏がすべてに於いて最高峰を追求した成果であり、美食家の聖地となっています。

今回は友人の誘いでこの素晴らしいレストランで、ランチのひと時を楽しむことができました。

城はどこから見ても美しい造りをしており、近づいてディテールをクローズアップしてもほころびが見当たりません。レストランへの入口は城の側面にあります。

レセプションホールにはクロークがあり、そこで荷物を預け、案内を待ちます。2階へはエレガントな階段か、エレベータを使います。

友人とは現地での待ち合わせでしたので、まずはウェイティングルームに通されました。そこは、夕刻からはルージュバーとして営業する、官能的でミステリアスな空間。ほんのり赤いレースから透過する日差しも赤く染まって不思議な雰囲気でした。

待っている間、何か飲みものの注文を取りに来るのがふつうだと思うのですが、係は一切顔を出しませんでした。タバコのにおいがきついため、あまり居心地がよいと感じられず、早くここを出たいと願いながら待ちました。

やがて友人と合流し、すぐさまダイニングホールへ。すでにホールは多くのお客で賑わっており、たちまちレストランならではの心地よさに包まれます。

かつてタイユバン・ロブションだった頃に比べると、かなりモダンなテイストに変わりました。

基本的な構造はそのままですが、バカラの大きなシャンデリア、壁面の装飾を彩るクリスタル、黒いテーブルクロスなどをあしらい、クラシカルなデザインの中に、モダンが詰まったシェルターが出現したといった趣き。

まさにパリのラグジュアリーホテルに見られるような、クラシックとモダンの見事な調和がここにあります。

さて、今日のメニュは友人があらかじめ決めておいてくれました。ジョエル・ロブション氏のスペシャリテや旬の素材を味わえるというMENU PLAISIRです。

アミューズ・ブーシュ

パンはまずフィセルが置かれますが、後にブーランジェリーからのさまざまな種類のパンがワゴンで運ばれてきます。どれも美味ですが、どうにかして食べたい衝動を抑えないと、肝心なものが食べきれなくなってしまいます。

特選生雲丹 甲殻類のジュレになめらかなカリフラワーのクレーム

卵型ガラス器をそっと開け、銀のスプーンですくって一口頬張れば、全身に喜びが駆け抜けます。繊細で濃厚。高価な香水でも及ばないリッチな香り。それでいてさっぱりとした後味。シャンパンとの相性は最高です。

フランス産フォワグラ ポワレにし、パルメザンチーズのリゾットにのせて

とてもかたちがきれいなフォアグラ。リゾットともよく合い、ますます食欲が増して来ました。次の皿も楽しみ。

甘鯛 うろこ付きで香ばしく焼き、百合根と島根県益田市産柚子のナージュに浮かべて

「冬の定番」と紹介がありました。和食の技法をアレンジした一品。焼き上げた鱗のサクッとした歯触りは何ともいえません。柚子の風味も効いています。

特選牛フィレ肉のトゥルヌード 旬の野菜を添え、キャロットオイルと共に

メインディッシュは思っていたよりボリューム控え目で、肉と野菜が同等に主張する感じ。私はグリーンピースが苦手ですが、鹿児島産のものであれば美味しく食べられます。そこで産地を尋ねてみると舶来品でした。残そうかと思ったのですが、ロブションだとどんな味かと興味が勝り口にしてみました。微妙。

アールグレイとレ・コンサントレのジュレ “チャイ”のイメージで

タルトフロマージュ イチゴのジュレとプラリネルージュのグラスを添えて

デセールはアヴァンも含めて懐かしい味がしました。洗練された料理が続いた後で、子ども好みする素朴な味わいは意外。

カフェとミニャルディーズ

私はコーヒーにしましたが、友人はフレッシュハーブティを。ワゴンで運ばれたハーブを目の前でブレンドしてくれます。お隣のご婦人も、「あら、私たちもそれがいいわ」と、頼んだコーヒーから鞍替えしたのも頷けます。

サービス陣はとても若いです。ふつうのにいちゃんねえちゃんという感じですが、よくいえば自然体。年齢が年齢ですから経験もさほど深くないでしょうけれど、よく勉強しています。BGMはJAZZ。音楽はなくてもいいのではないかと思います。店にある音だけで十分素敵ですから。

料理も雰囲気も素晴らしい。でも、やはり割高な感じがします。この値段なら美味しくて当たり前。評判の高い店にとって、期待を超えるのがいかに困難なことかを考えさせられました。