佐賀の小学校

今年も佐賀県内の小学校を巡回して演奏会を開催しました。メンバーはいつもの波多江史朗、石川昇平、米津真浩、神田将のクァルテットです。もう長い付き合いのチームなので、演奏の信頼関係は鉄壁。一年ぶりの再会でしたが、ステージに構えたとたんに息のあった演奏が始まり、素晴らしい共演者に恵まれていることを実感しました。(トップ写真の中央でアルトサックスを持っているのは、エンジニアとしてツアーに同行してくれた穴見さん)

不変のチームワークの一方で、激変したことも。それはひとりひとりの進化です。これまでも少なくても年に一度は顔を合わせてきましたが、これほど顕著に変化を感じたのは初めてです。

私は年長という理由でリーダーを務めていますが、ステージでは一歩引いた立場で振る舞うようにしています。それは目立つ目立たないのことではなく、私は常に引き立て役であり、不都合や問題が生じた際の調整役であるということです。

メンバー全員が経験豊富な演奏家ですし、相互のことを考えて気遣える連中ですから、角が立つことはまずありません。でも、あまりに人間関係が円滑過ぎてかえって怖くなることも。考えてみると、全員が嗜好もキャラクターも違っていて、あまり連まないのが円満の秘訣な気がします。

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さて、私たちの演奏会は1日に2回。午前と午後にふたつの小学校を訪ねます。その都度、楽器を運送し、舞台を整えます。

学校に到着すると、まずその日の舞台になる場所を確認。ステージ上のこともあれば、下になることもありますが、それはピアノの置いてある場所によって決まります。運び込むのは、エレクトーン、ドラムセット、スピーカー。先生方にもお手伝いいただいて、運搬車からステージに運んだら、分解されケースに収められたものを、広げて組み立てる作業をします。

組み立ての間、米津さんにはピアノに触れてもらいます。他のメンバーは使い慣れた楽器を演奏できますが、ピアニストだけは初めて触れる現場のものを弾かなければなりません。体育館のピアノは古いものや整備が不十分なものも少なくありませんので、少しでも早く触れて、本番に備えてもらいます。

到着からセットアップ完了まで約20分。かなり手際よくなりました。メンバーが音出しをする間に校長に挨拶したり、進行の打ち合わせをします。リハーサルは疑問点があったり響きが特異である場合を除いてほとんどやりません。それどころか、私はほとんど鍵盤に触れることなく本番を迎えます。

程なく子どもたちが入場し、私たちは衣装に着替えます。拍手に迎えられて舞台に進むと、目を輝かせた子どもたちと対面。演奏会は約80分。子どもたちにとって休憩なしの80分は非常に長い時間のはずですが、最後までしっかりと聞いてくれます。私たち演奏家が決して気を抜かないこと。そして、率先して楽しみながら演奏すること。そうした姿に子どもたちも何かを感じてくれているのかもしれません。

演奏会が終わると、片付けが待っています。余韻が冷めやらぬ会場で、手際よく解体梱包を済ませ、また次の町へと移動です。体力的にもたいへんですが、次々と新しい出会いがあり、音楽の素晴らしさを実感できるのですから、これはもうやめられません。

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