冷静と熱狂のあいだ

全国から飛び込んでくるコンクールの結果に、一緒になって喜んだり、ガッカリしたりの一日。それぞれに精一杯の努力を重ねて取り組んできたことは間違いなくても、結果はさまざまです。

実は私が最も気にして待っているのは結果ではなく、気持ちよく弾けたがどうかという知らせです。そう言っては負け惜しみに聞こえるかもしれませんが、そんなことはありません。

演奏を磨いていく過程で忘れてはならないのは、どれだけ成長したかということ。テクニック的なことだけでなく、集中力や思い切りのよさなど、精神面での成長は特に大切です。

無我夢中の演奏も人の胸に響くことがありますが、よい演奏を安定して継続するには、周囲の状況や自分のコンディションに応じて、さまざまなコントロールができている必要があります。

ステージで、高い緊張状態の中で実践する演奏は、そうした力を磨く絶好のチャンス。なので、私はまず「どんな気分だった?」と尋ねます。

答えが「気持ちよかった」なら結構。そして「前よりも細かいことが感じられた」ならなお結構。熱狂的なものを表現しながらも、心の芯で冷静さを保つには、全体を見る力と細部を見逃さない力の両方を磨きあげなければなりません。

今回のステージがその経験のプラスになったのなら、出演した価値はとても大きいと思います。頼もしい子どもたちに拍手!