strained back

石巻で迎えた爽やかな朝。昨晩は首をすくめたくなるほど冷え込みましたが、今日は小春日和です。宿から北上川河口まで走りに行くと、多数のランナーとすれ違いました。

マンガッタン島はすぐに見つかりました。想像していたよりも小さな中州ですが、宅地があるほか、萬画館のユニークな建物がひときわ目立っていました。

宿に戻って、二番乗りで朝食(一番乗りは紳士風のおじさんでした)をとり、コンサートのための身支度を整え、いざ出発。

ローテーブルに載せたトランクを床に立てようと持ち上げたその時、腰がグキッと・・・

ああ、これがウワサに聞いていたぎっくり腰というやつか。目の前に火花が散る痛みなのですね。

真っ先に思い浮かんだのは、公演キャンセルの後始末。皆さんの期待を裏切ってガッカリさせてしまったことに、自分自身がどっぷりと落ち込んでいる様子が脳裏をよぎりました。

いやいや、そうはいかない!私は這ってでもステージに向かう!

でも、実際、這いつくばってステージに出てくる自分の姿を想像したら、ちょっと気分が萎えました。颯爽と舞台に登場するのが私のトレードマークですから。

健康管理や怪我への注意は常に怠りなくしているつもりでした。でも、今回は私の油断です。

移動に次ぐ移動。20キログラムを超えるトランクに加え、10キログラムを超えるバッグ。地方に行けばエレベータやエスカレータは少なく、長い階段や路面の悪い場所を歩くこともしばしば。

「これは気を付けないといつか怪我をする」と、十分頭に焼き付けていたのに・・・

とにかくまずは出発。ロビーで待つマネジャーに「どうもぎっくり腰みたい」と告げながらも、たぶん私の表情は平常通りなんだろうなと想像。

マネジャーは大層気を遣ってくれ、荷物運びから楽器のセッティングまで、手際よくやってくれたのですが、ボケっとそれを眺めている自分自身が恥ずかしくてなりませんでした。

会場では、午前中から昼食を挟み14時の開場時間まで、ひたすらコンディションを気にしながらリハーサルに勤しみました。演奏中に妙な事態とならいためには、限界を知っておく必要があったからです。

不思議なことに、演奏中は痛みがまったく気になりません。でも、ひとたび立ちあがると崩れ落ちそうになります。痛いのはいくらでも我慢しますが、まるで不意を突かれるように力が抜けてしまうのには困惑しました。

やがて本番がスタートしました。今日のクローズコンサートのお客様は約500人の中学生たち。これだけの人数が集まると、シャイな子からやんちゃな子まで、キャラも幅広く揃っていますが、平均すると真面目で大人しい皆さんです。

反応や拍手は控えめですが、高い集中力と吸収力がビンビン感じられたので、私はとても気分よく演奏することができました。

私は1曲目の演奏が終わって挨拶をした際に、今日も決して手抜きすることなく、最後まで全力で真剣に演奏すると約束しました。その決意にしっかりと応えてくれたばかりでなく、私の気持ちを最後まで支えてくれた皆さんに感謝しています。

コンディションの悪さを感じさせることなく、いつも通り、いえ、いつも以上にパワフルな演奏をお届けしたわけですが、終演後にはちょっと無茶した実感がありました。

いつもは快適な新幹線ですが、今日ばかりはわずかな振動が拷問のように感じられ、ちょっとした不注意が大事に繋がることを、その痛みの中にしっかりと念じ込みました。

石巻の皆さん、またいつか必ず会いましょう!