tuttiの会~佐賀~和歌山

11月1日に明石でのコンサートが終演し、混み合う電車を乗り継いで伊丹空港へ。最終便で羽田に飛び、成田のホテルに着いたのは日付が変わる頃でした。レストランも閉まっていたので、夕食は明石で差し入れにいただいたダニエルのカヌレ。これ結構腹もちがいいので助かります。そのまま眠らず朝を迎え、朝食はしっかりと食べ、富里のコンサート会場へと向かいました。

富里中央公民館での演奏はこれで2回目。最初は約10年前で、その時が波多江史朗さんとの初共演でした。もう10年か・・・と思わず朝からしみじみとした気分です。でも、会場は朝9時の準備開始からすでに活気に満ちていました。自身の演奏を控えながらも、それぞれの役割をこまごまとこなしてくtuttiのメンバーたち。大勢のボランティアのサポートは、すっかり板についていますし、主催の文化振興協会の方々も、頼もしく見守っています。

前半のリハーサルが済んで、波多江さんと私のゲストタイムのリハーサル。波多江さんの音を聞くのは半年ぶりですが、こうしてホールでクラシックを共演するのはかなり久しぶりです。今回はトスカの名曲を集めたファンタジーを初共演。音色が一層美しくなったなと、うっとりしながら伴奏しました。

tuttiメンバーと私は、カルメンのメドレーとピアノコンチェルトを共演。他メンバーも、サービス精神に富んだ演出をして、ほぼ一杯の客席はおおいに盛り上がりました。波多江さんのゲストコーナーも素晴らしく、tuttiの20周年にふさわしい贈り物になったことと思います。

弾く歓びを地域の皆さんと気軽に分かち合う活動をしているtuttiの会。次は30周年ですね!とメンバー一同、更に意欲を燃やしている様子に、私も大きな刺激を受けました。

翌日からは佐賀県内での学校巡回コンサート。サクソフォンの波多江史朗さん、パーカッションの石川昇平さん、ピアノの米津真浩さんと、豪華メンバーでのツアー。これほどのエリートたちに支えられて、私は本当にラッキーです。そして写真は引率の西村さんです。

石川さんとはほぼ1年ぶりの再会。リハーサルは初日の朝とギリギリですが、4人の息はぴったりですし、みんなのことを信頼しているので、まったく心配ありません。スタッフとも阿吽の呼吸ですから、すべてが滞りなく進み、イレギュラーなことが生じても、すぐに解決できる理想のチームです。

それは子どもたちの反応にも如実に表れています。最後部の席からだと、数百人の子どもとステージとが一体となって、あっという間に時間が経つのを目の当たりにできるでしょう。

エレクトーンアンサンブルというタイトルが付いていますが、すべての楽器にまんべんなくスポットを当て、それぞれの楽器の魅力を理解した上で、4人が力を合わせてアンサンブルするところを見てもらっています。プログラムがよく練られていますし、体験コーナーもあって、本当にいいコンサートですので、もっともっと多くの子どもたちに聞いてもらいたいものです。

佐賀での巡回コンサートでは、とても充実した気分になれました。いい子どもたちがいる学校には、必ずいい先生たちがいます。また来年も、佐賀の子どもたちに会えることが決まっているので、今から楽しみです。

その後は、佐賀市内でのレッスン、東京に一瞬だけ戻って夕食、徳島音楽コンクール、香川でのレッスンと続き、10日に和歌山入り。その日は宮井楽器でひたすら自分自身の稽古をしました。集中して朝から夜まで弾き続けられるなんて、何という幸せ。いつまでもこの時間が続けばいいのに。

11日も朝から弾いて、午後1番で会場へ。和歌山県民文化会館は、耐震工事こそ終えていますが、基本的に古い設備。手仕事で反響板を組み立てていきます。

米津さんを和歌山駅に迎えに行き、ふたたびホールに戻った頃、ちょうど調律も終わり、そろそろ音が出せる運びに。まずはピアノからどうぞと、米津さんに弾いてもらって、私は例によって客席のあらゆる場所で音を確かめます。ここはピアノを聞くなら最前列がいいかも。

気が済むまでどうぞと言ってしまうと、米津さんは本番ギリギリまで弾き続けてしまいます。そろそろコンチェルトやろうかと声を掛け、いよいよアンサンブル。互いの息は佐賀でも確かめあっているので、アンサンブルとしての響き具合に神経を向けます。

弟子たちに客席の各所で聞かせ、気付いたことを言ってもらいながら、バランスをコントロール。お互い本番の本気モードになった時にどれくらい変化するかも計算しておきます。

上の写真を見ると、エレクトーンがずいぶんと隅にあるように感じるかもしれません。実際、かなり上手寄りに設置しています。エレクトーンはスピーカーから発音しますので、本体がどこにあっても響きには影響ありませんが、ピアノは設置場所が重要です。まずはピアノの響きを優先して場所を決め、それからアンサンブルしやすい位置にエレクトーンを据えるようにしています。

本番は数分押しでスタートしました。米津さんのピアノソロは4曲。英雄ポロネーズ、木枯らしエチュード、ラ・カンパネッラ、バラード4番と、名曲中の名曲揃いです。もちろん私も全曲聞きましたが、とりわけ素晴らしかったのはバラード。これほど奥行きのあるピアニッシモはなかなか聞けません。しかも、限界が近い暴れピアノで。

米津さんのピアノはここ数ヶ月でガラリと変わり、6月の時とは別人です。作品の解釈や演奏プランにも、より確かな意図を持つようになり、格段に洗練されました。コンチェルトも、堂々としたテンポ設定、より視野の広いフレーズ感など、日本人の緻密さにロシア的大胆さが加わって、それはもう圧巻でした。

そしてアンコール。ハチャメチャハチャトゥリヤンの剣の舞。前日に思い付きで「やっぱりさ、アンコールしよっか、剣の舞とかどう?」と米津さんに振ったら、「やりましょう」と言ってくれたので、当日いきなり合わせてみたのですが、これは面白い!と気に入りました。またどこかでやりたいと思います。