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2003年9月1日

パークホテル東京 Superior Room
哀-4 halfway design
ギルクリスト&ソームズのバスアメニティ
ロイヤルパーク汐留タワーがオープンしてちょうど2ヶ月、そのまさに目と鼻の先にパークホテル東京が開業した。芝の老舗ホテル、芝パークホテルが手がけるのは、今の流行であるスタイリッシュモダンなデザインホテルだ。

極めて近い距離に2軒のモダンなホテルが存在することになった汐留だが、現在のところ個性を競いあうというよりは、なんだか同じようなホテルばかりで、これらを埋める需要が果たして存在するのだろうかと不安になる。しかもプラン料金は、両ホテルとも身の程知らずとも言える強気の価格設定だ。近隣の帝国ホテルやインターコンチネンタルの実売価格よりも高いプラン料金で利用した客が、本当に満足して次回もこのホテルを選ぶのか、大いに疑問を感じずにはいられない。

そして、このホテルはデザインホテルであることを強調しているが、その言葉から想像するような、クセのあるアバンギャルドな雰囲気も、あるいはうっとりするような洗練も、まったくと言っていいほど感じられなかった。雰囲気も質的にも、ちょっとオシャレなビジネスホテルという程度で、ヴィラフォンテーヌやセレスティンホテルあたりがライバルとしてお似合いだろう。もとよりデザインに無縁なホテルなど存在しない。しかし、それをうたい文句にするのであれば、他よりも明らかに優れた特長として実感できるレベルであるべきだ。

このホテルには駐車場が17台分しか用意されていない。274室の客室、2つのレストランと3つのバー・ラウンジ、小さいながらバンケットルームもあるにもかかわらず、駐車場が非常に少ない。聞けば、満車の場合は、近隣のコインパーキングを利用してもらうしかないという。また、周辺道路からホテル車寄せまでの道順が極めてわかりにくかった。案内表示は一切なく、表の道路がまだ工事中のため、「関係車両以外進入禁止」との看板が掲げられた通路を入って行かなくてはならないので、タクシーですらホテルまでたどり着けないのではないだろうか。正面車寄せはホテル専用ではなく、オフィスと共用のエントランスになっている。

オフィスロビーの一角にホテルロビーへと向かうエレベータホールがあり、その前にはホテルのデスクがあって、日中は係が常駐しており、荷物が多い場合はそこに応援を頼むことができる。ロビーへと向かうエレベータは3基、地下4階の駐車場まで行くエレベータはそのうち1基だけ。いまどきのエレベータとしては、上昇速度が随分とゆっくりしている。台数はパークハイアットやロイヤルパーク汐留タワーと同じだが、少なすぎていつでも待たされるところまで同じだ。

25階に降り立つとそこはまだ窮屈なエレベータホールだが、少しロビーへと足を進めると、最上階まで吹き抜けの、トップライトから光が差し込むアトリウムに目を奪われる。アトリウムはダークブランを基調に落ち着いたコーディネート施され、ところどころにグリーンを配置してあるので、ソファやベンチシートに腰掛けると、まるで天空の公園のような雰囲気が感じられる。アトリウムの回りには取り囲むようにレストランやフロントカウンターがあり、フロントカウンターの背後には、東京タワーをはじめ、このホテルで最も眺めのいい向きの景観を望むことができる。

チェックインを担当するのは若いスタッフたちで、心持ち緊張しているようだが、終始笑顔を絶やさず、真心込めてサービスに当たっている印象が伝わってきた。サービスに関しては、全体にまったくトゲがなく、生真面目で親切だった。しかし、積極的とは言いがたく、決まったサービスを決められた範囲内で行うに終始していることも事実だ。基本的にベルサービスは行わず、客室への案内も場合によってサポートするだけというスタンス。宿泊料金は、室料のみを前払いするシステムだと説明を受けた。

客室へ向かうエレベータは3基。こちらは比較的スムーズに使えた。客室階の廊下はアトリウムを取り囲むように配置され、片側に客室、片側はアトリウムを見下ろすといった具合に開放感のある造り。しかし、廊下そのものがとても狭いので、清掃のワゴンがあるだけで、荷物を持ったまま横をすり抜けるにも差し支える。今回利用した客室はスーペリアツイン33平米、ラックレート30,000円の客室だ。三角形の先端部分に位置しており、ワイドな窓が印象的。客室の形状がちょっと変わっているので、レイアウトには随分と頭をひねったのではないかと想像される。

この客室は、ホテルのサイトに紹介されている同じカテゴリーの部屋とはレイアウトが若干異なっているが、こちらのタイプはどうも密と疎の差がありすぎて、使い勝手の悪い客室だった。客室エントランスからベッドルームまでは、ほとんどガランとしていてもったいないほど。しかし、ベッドルーム部分はあれもこれも押し込まれたという感じで、窮屈このうえない。ものをよけなければ歩くことすらままならなかった。110センチ幅と狭いベッドが2台入るが、寝具はデュベスタイルで、白いカバーは毎日取り替えられるのかと思いきや、間にシーツを一枚挟んでの使いまわし。

天井高は最高で270センチだが、室内の多くの部分は230センチしかないので、圧迫感が強い。ワイドな窓も騒音を避けるために二重窓になっており、互いに反射しあってせっかくの景観もクリアには見えなかった。しかも肝心な遮音効果は低く、工事や電車の音には相当な覚悟が必要だ。照明は控えめでソフトだが、天井には蛍光灯のシーリングライトが設置されている。しかし、これを点灯させると、ムードもなにもなくなってしまう。かといって点けなければいささか暗い。

ファブリックの色調はナチュラル、ざっくりとした肌触りもまたナチュラルな印象だが、上質とは無縁の品ばかり。特に壁紙はまさにビジネスホテル仕様。高級なものを使えばいいというものでないが、安普請な上に、デザイン的工夫も今ひとつでは、価値を見出すのが難しい。たとえば安物を使うにしても、壁面によってカラーや質感の違うものを使って変化を演出するだけでデザイン性が感じられるのに、それすらないのだ。ナイトテーブルに載っている電話機、目覚まし時計もまた、デザイナーなら避けたいような品に違いないのに、なぜあるのか不思議だ。その他、液晶テレビはあるがチャンネル構成がつまらない、冷蔵庫にはシャンパンもあるのにシャンパングラスはないなど、バランスが悪い事柄が多かった。

そして、バスルームには唖然とした。タイル張りであるものの、配置も仕上げもまるでビジネスホテルのバスルームそのものだった。バスタブの上にも蛍光灯があるので明るく、ベイシン上の白熱灯が調光できる点が工夫と言えば工夫だが、他にハードでの個性は皆無に等しい。アメニティには力をいれ、タオルにもシャレた刺繍を施すなど、添え物としての彩りは感じられるものの、これがデザインホテルのバスルームだとは聞いてあきれるだけでなく、そもそも設備として不親切だ。

ベイシン脇に取り付けられたタオルのフックは、ベイシンの天板までの高さが60センチほどしかなく、バスタオルやバスローブは掛けられない。普通はバスルームの扉や壁の高い部分などに取り付けるタイプのタオルフックで、適当な取り付け可能場所が他にもあるのに、なぜこんなところに取り付けてしまったのかと不思議に思う。一番掛けたいものが掛けられないのだ。

そして、不親切さを決定的に印象付けたのは、ホテルディレクトリだった。氷の場所はどこかと思い調べると、各階に製氷機があるとは書かれているが、どの辺りなのかは示されておらず、エレベータホール裏にひっそりと隠れるようにして配置されているのを発見するまで時間を要した。また、マッサージを頼める時間帯や料金はどのようになっているかを参照しようにも、フロントにお尋ねくださいとしか書かれていない。万事がこの調子で、知りたい情報が不足していてとても不便だった。しかし、ユニークな一面もあった。宿泊客がホテル滞在中に死亡した場合には、条件を満たせば10万円の見舞金が支払われたり、支配人クラスの人間が葬儀に参列することもあるという規約が書かれており、興味深く読んだ。

室内全体の設えに関しては、デザインホテルを名乗るにはもう一工夫欲しかったのが実感だが、小物類にはセンスが感じられるものも少なくはなかった。また、LANが無料であること、フレンチレストランからのスペシャリテもオーダー可能な24時間営業のルームサービスやクイックランドリーなど、優れたサービスも実現しているだけに、一層アンバランスさを感じさせる。ベルアテンダントのいないホテルルームで、高級フレンチのルームサービスが必要か。メモ帳に添えられた長さ10センチほどの鉛筆以外に筆記具を備えない客室の冷蔵庫に、シャンパンの常備が必要か。そして、対価格での満足度は、残念ながら極めて低かった。

清掃の際に他の客室を覗いてみたが、鮮やかな赤を基調としたコーディネートのスタンダードルームの方が、比較的デザイン性を感じさせるような気がする。また、スーペリアルームは3名1室で利用するならともかく、2名で利用する場合は、1ランク下に当たる25,000円のBタイプで十分。室内に設備はほとんど同じだし、無駄なスペースがない上に料金が安いので、浮いたお金で「タテルヨシノ」のランチでも食べる方がよほど満足できるだろう。

ベージュとダークブラウンでコーディネートされたスーペリアルーム インテリアは至ってシンプル

窓はワイドだが2重窓のため視界がクリアでないのが残念 隅っこに配置されたライティングデスク

ナイトテーブルの時計や電話機はちょっとダサい 無料のドリップコーヒーや紅茶が用意されている

サービスディレクトリーと宿泊規約 面白みのないバスルーム

バスローブも備える アメニティの数々

客室階のエレベータホール フロント前の無料のシッティングスペース

2003年9月1日 昼
パークホテル東京 ガストロノミー フランセーズ「タテルヨシノ」
喜-4 汐留のパリ
ホテルとしての魅力は今ひとつでしかなかったパークホテル東京で、最も利用する価値のあるのがこのレストランだ。小田原でひときわ異彩を放っていた「ステラマリス」が本場パリへと進出し、着実な成長と確かな自信を持って東京に支店を出したのが、芝パークホテルの「タテルヨシノ」。その姉妹店としてパークホテル東京のダイニングをも担うことになった。芝ではホテルダイニングらしさのある店構えだが、こちらではダイニングルーム、ライブ音楽も楽しめるバーラウンジ、そしてアトリウム内のロビーラウンジと3つのセクションから構成されている。

ダイニングルームはわずか20席の小ぢんまりとした空間で、ホテルダイニングというよりは、街中のレストランという趣きだ。サービスにもフレンチレストランらしさが光り、カタチだけでなく中身で勝負するというスタイルがまた心地よい。下手に媚びていないので、やもすれば粗野に感じられることもあるが、料理に対する知識にはぬかりがなく、ゲストを満足させようという気持ちも実力も十分にある。そして、何といっても、堂々たる完成の域に至った料理は、すべて申し分なく素晴らしかった。

この日はタテルヨシノその人が厨房に立っていたことも大きいかもしれないが、思わず気が遠くなるような、深く官能的な味わいに、ホテルでは久しく感じることのなかった食することの喜びを呼び覚まされる思いだった。ランチコースはビジネスユースでも短時間で食事を楽しめる3,500円と、タテルヨシノの魅力を凝縮した6,500円の2種類。その他アラカルトも用意する。ディナーは9,000円より。ピエール・エルメで腕を磨いた成田一世のデセールの数々もまた素晴らしい。遠方からでも訪れるだけの価値が十分にある、トップクラスのダイニングである。

[パークホテル東京]

Y.K.