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2005.06.11.(土)

羽田エクセルホテル東急 Superior Room B
Haneda Excel Hotel Tokyu
哀-1 Face
レストランに飾られた飛行機の模型
東京の空の玄関口として発展著しい羽田空港に、2004年12月、初のターミナル直結型ホテルが開業した。前身である羽田東急ホテルは、昔、ターミナルビル前の好立地にあったが、ターミナルはホテルを残して移転してしまった。ビッグバードがオープンしてからというもの、周辺の施設は更に移転が進み、荒地に忽然と建つホテルのようになってしまっていたが、2004年に閉館し、羽田エクセルホテル東急にシフトする形を取った。

羽田エクセルホテル東急があるのは、全日空系が発着する第2ターミナル。エントランスは出発ロビーに直結しているので、チケットレスでスマートe-チェックインを併用すれば、ホテルをチェックアウトしてから5分後には機内でシートベルトを着用しているという芸当も可能だ。

出発ぎりぎりまで時間を活用できるのは一見魅力的に感じるが、電車と違って飛行機の場合は余裕を見るという習慣が根付いているので、空港内に泊まってまで時間の有効活用をしたいという客が、果たしてどれだけいるだろう。387の客室を埋めるのは、なかなか大変だと思う。

ターミナルの方からホテルを見ると、中がよく見えないようになっている。ターミナル混雑時でもホテル内の雰囲気が保たれていいような気もするが、外部からはここが何であるのかがわかりにくい。レストランのメニュー看板も、目隠しされたエントランスの中に立ててあるので、ターミナルを訪れた人が、ふと立ち寄るには不向きになっている。そのためか、レストランが混雑しているのを見たことがない。

サービスはエクセルホテル東急らしいさっぱりとしたもの。ロビーにはロビーアテンダントと呼ばれる係が常駐しているが、アルバイトと思しき若い女性ばかりで、あまり役に立っているようには思えなかった。ロビーは北欧のテイストでコーディネートしたという。ホテルは「H」型をしており、客室の位置によってはエレベータホールからかなり遠い。

利用した客室は5階滑走路側のスーペリアツインのBタイプ。駐機場に面しており、滑走路も目の前というユニークな眺望が特長だ。これほど近くに飛行機があると外部の騒音が心配だが、それはまったく気にならなかった。むしろ、廊下の音の方が騒々しかった。面積は30平米程度だろうか。120センチ幅ベッド2台と、オットマン付きの椅子、小さなテーブル、デスクユニットとバゲージ台という設備で、すっきりと仕上げている。

インテリアは淡い色の木目と、グレーの取り合わせを基調に、彩度の低いコーディネートをしている。アクセントに添えたクッションも寒色にしたため、かなり寒々しい印象になってしまった。他には赤いアクセントカラーを用いた部屋もあり、そちらの方が印象がいい。また、他の部屋にはミニ観葉植物があるようだが、この部屋に限ってそれがなく、まるで命や温もりとは無縁のツンドラのようだ。壁に掛かる空港の表情を捉えたフォトグラフだけが、かろうじて人間味を感じさせる。

寝具はスプレッド一体型で、清潔感に乏しかった。寝具をめくると、そこには無数の髪の毛が落ちており、ちょっと引いてしまった。窓際に置かれた椅子は、なんとも座り心地が悪い。窓も汚れているし、テレビは小さい上につまらないし。

まったくくつろぎようのない部屋だと思いながら、お茶でも入れようと引き出しから道具を出そうとした時、氷用のトングが汚れているのが目に入った。おそらく、前の客がカップ麺でもこしらえて、箸の代わりにトングを使って混ぜるか食べるかしたのだろう。あろうことかそのままの状態で入っていた。

LANは無料で、デスク前にコンセントも備えている。冷蔵庫には数は少ないが、飲み物が入っており、ソフトドリンクは150円と手ごろなのがいい。ルームサービスは夜のみの営業だ。入口脇に引き戸のクローゼットがあるが、かなりの狭さだった。宿泊客の駐車料金は1泊4,000円。

照明は窓上の蛍光灯、ダウンライトと入口灯、ふたつのスタンド、ナイトランプがそれぞれ独立している。卓上のスタンドは固定されており、動かすことが出来ない。それより、ナイトランプが使いにくかった。プッシュするごとに3段階に明るさが変わり、4回目に消えるスイッチが付いているのだが、例えば深夜に一瞬淡いライトを点けて何かを探そうとする場合も、必ず一度は最大の明るさにしなければ消灯しないので、まぶしい思いをすることになる。

バスルームは広く取られている。入口は引き戸で段差がなく、中も車椅子で動きやすいほど余裕がある。ベイシンとバスタブが並んでおり、バスタブは頭の部分が盛り上がったプラスチック製のもので、ゆったりとしているが、シャワーカーテンはペラペラ。シャワーの圧はまあまあだ。

ベイシンの後ろにはガラス扉で仕切られた部分があり、シャワーブースがあるのかと思いきや、独立したトイレだった。やけにしっかりと仕切ってあるが、その意図は不明。照明も平板でつまらない。アメニティはエクセル東急共通のもので、タオルはくたびれて黒っぽかった。

朝食はレストランでブッフェスタイルで提供される。ブッフェ台の前でトレーを渡され、平たい皿に料理を盛って歩く。和洋揃うが、どちらかというと和食アイテムが充実。たらこ、山芋、ひじき、シラス、ごぼうなどが並び、健康的なイメージ。だが、ジャガイモの煮物は美味しくなかった。店内は混雑どころかガラガラ。その割にブッフェ台のメンテナンスはよくなかった。チェックアウト後にはラウンジコーナーでコーヒーを。820円だった。しかし、ラウンジが全席喫煙とは今時珍しい。

今回は、客室の清掃に不満が感じられたが、それを黙って過ごすことにした。それは廊下で一人の老女に出会ったからだった。チェックインを済ませて、一人で客室に向かっている時、客室係とすれ違った。彼女は目が合うと立ち止まり、ゆっくりと腰を折って「いらっしゃませ」と微笑んだ。その顔には深い皺が刻まれているが、これまで一度たりとも怒りを浮かべたことなどないような、どこまでも柔和な表情だった。人の顔がこんなに優しいなんて。

この歳になって、客室係として働くのは楽でないに違いない。小柄で細い体ではなおのことだろう。なにか胸が締め付けられるような思いだった。もしかすると、清掃の不備は彼女の見落としが原因かもしれない。彼女が叱られて落胆するのを見たくなかった。この日ばかりは、どんなことでも我慢ができた。

色が寒いツインルーム ベッドは120センチ幅

入口を見る デスク周辺

バスルーム ガラスで仕切られたトイレ

窓からの眺め 外観

アクセス道路に面したエントランス ロビーの一角

[羽田エクセルホテル東急]

Y.K.