せんくら2010の選曲

今日の東京は穏やかに晴れ渡り、行楽日和でした。
私は終始屋内で頭をひねり続けているうちに日が暮れてしまいましたが、日中、鼻腔にかつてない違和感を覚え、それ以降くしゃみが止まりません!

もしや花粉症デビューでしょうか。
いや、ちょっとした風邪気味だと信じましょう。
でも、先日の抗生剤大量摂取で体質が変わってしまったのかも・・・
ともあれ、しばらく様子をうかがってみようと思います。

今日一番頭を悩ませたのは、秋に出演予定の仙台クラシックフェスティバルで演奏するプログラム決めです。
まだ半年も先のことですし、公演スケジュールも暫定的な中、演奏曲リストは明日までに提出することになっています。

昨年の「せんくら」に際しては、初めての出演だったこともあって、公演の雰囲気やどんなお客様が来て下さるのかがわからず、本当に悩みながら選曲しました。

クラシック界の有名演奏家ばかりが並ぶ中で、私のような無名の異端児は、いったい何をなせばいいのか。いくら悩んでも見当もつきませんでした。

「せんくら」ではオーケストラやピアノをはじめ、さまざまな楽器や歌による本格的な演奏が目白押しですので、私がひとりでそこに正面切って挑戦しても、あえなく玉砕されるのは目に見えています。

どうしたら皆さんに興味を持ってもらえるのかを考え抜いた末に、コンセプトのあるプログラムと、それを一発でイメージできるサブタイトルを掲げようと思いつきました。

そのヒントを与えてくれたのが、マネジメントを担当しているジェスクの部長でした。
「こういう選曲をしてくれ」というような直接的な指示はないのですが、やりとりの中で「わくわくする」とか「楽しめる」というキーワードがたくさん出てきたので、お客様に気軽にリラックスして楽しんでもらうことが大切なんだと感じ、自分が客だったらどんな曲に興味を持つだろうかという視点で考えてみました。

そして、「Love Supremacy~至上の愛を奏でる男~」とか、「La Valse~エレガントに官能的に・・~」など、恥ずかしいタイトルを「自分で」考えて提出したのです。

それが一発でOKになったのは嬉しかったのですが、いざ、弾くとなると「ちょっとまてよ、これ、全部弾くの?」と、2日間4公演で27曲をどう弾き切るのか、かなり不安になりました。

しかも、「せんくら」の日程は軽井沢のリサイタルを終えた直後で、3日間の会期の中日には小樽のリサイタルがあり、「せんくら」を終えたらその足で千葉に移動し、翌朝から5日間のオペラ公演が予定されているという地獄のスケジュール内です。

なんとか27曲をひっさげて仙台入りし、オープニング前夜のレセプションに参加。周囲に集まった大物音楽家にビビりつつも、皆さんに挨拶して回ると、ほとんどの皆さんは初対面なのに「お久しぶりですね」とか、「前にお会いしましたよね」と、優しい気遣いをしてくれました。

いよいよ本番。私のコンサートが「せんくら2009」の幕開けプログラムのひとつで、コンセプトは「0歳児コンサート」。
これは私の発想ではなく、クラシック音楽をできるだけ早い機会に体験できる場を設けたいという主催者の意向で実現したもので、会場には若いママさんやベビーカーの子供ちゃんが詰めかけていました。

開場から開演の間、楽屋のモニターで会場の様子をうかがっていたのですが、ステージ上でハイハイしてる赤ちゃんがたくさんいてビックリ。
でも、その様子を見ていたら、なんだかとってもリラックスできたので、赤ちゃんたちに助けてもらったようなものですね。

以降、小樽を挟んで4つの公演をなんとか終えましたが、演奏家にとって特に気を抜けない作品を選びすぎたこともあって、自分がいつになく硬くなっていたことを深く反省。
次のチャンスがもし得られたら、選曲には十分気を付けなければと思った次第です。

「せんくら」では嬉しい出来事に多く恵まれましたが、街を歩いていてお客様から「神田さ~ん」と声を掛けられたことも大きな思い出です。
私の公演を見て下さったお客様かと思いきや、「あなたのチケット、買えなかったのよ~っ」って。
そうなんです、ありがたいことに「せんくら」では発売初日にほぼ売り切れてしまいました。

逆に「つかぬことをお聞きしますが、なんで私の切符などお求めになろうと思われたのですか?」と、今後の参考のために尋ねてみました。

「選曲がいいじゃない?聞きたい曲ばかりだし。」との返事には選りすぐった甲斐があったと思いましたが、「それにおしゃべりが楽しそうでしょ。」って、どうしてそれを?
どうも仙台放送で流れていたCMで、ちょっとばかり私がしゃべっているのを聞いてくれたらしいのですが、やはりメディアの効果って大きいですね。

というわけで、今年も選りすぐりました。
3日間で5公演、35曲。コンセプトも一新しました。
昨年以上に耐久レース的プログラムですが、早期の準備とゆとりあるスケジュールで、昨年の反省点をクリアしたいと思っています。
今夜提出して、マネジメントの指示を待ちます。

ぜひ、秋の行楽に「せんくら」へお出かけください。