沖縄で見た太陽と月

沖縄に来て3回目の夜になりました。
初日は厚い雲に覆われ、ほとんど雨が降りっぱなしでしたが、翌日にはやっと太陽が顔を出してくれました。
同じ景色、同じ海でも、太陽の光を浴びているかいないかで、まったく印象が違いますね。これは沖縄に限ったことではありませんが、眩しいほどの自然を味わえる環境では、太陽のありがたみを一層強く感じます。

今回、沖縄で一番楽しみにしていたのが、ある人との2年ぶりの再会です。

その人は東京のホテルで特別階の責任者をしていた女性で、約2年前に沖縄のホテルへ移って来ました。系列のホテルではないので、一度退社して再就職というスタイルだったのでしょう。

彼女が東京のホテルにいるころは、私に毎度のように怒鳴られていましたから、きっと私の顔を見るのもイヤだったのではないかと思います。私としても、ホテルのサービス基準や人手不足に由来する不行き届きを責めているのであって、彼女個人を攻撃する気はまったくないのですが、彼女が責任者ですので、どうしても何かが起こる度に、結果、厳しく当たっていました。

ある日、彼女の夢を見ました。「しばらく会えなくなるので、私の飼っている猫を神田様に預かって頂きたいのですが」と見事なチンチラを差し出したのです。

その直後、彼女に会った際、「猫、飼ってる?」と尋ねると、「いいえ」と苦笑していましたが、夢の内容を告げると、「実は」と切り出し、退職と再就職先の話を聞かされたのでした。

私は必ず次の勤務先にもうかがうと約束をしました。それを果たさなければと常々考えていたことが、やっと今回叶いました。

旅程のうち、1泊を彼女が勤務するホテルに泊まるよう調整してもらいましたが、手配をした人の名前で予約が入っているので、私が宿泊することを彼女は知らずにいたことでしょう。

到着した私を特別階のエレベータホールで出迎えた彼女は、私の姿を見るなり、すぐさま表情をゆるめて笑顔になりました。あれほどイヤな客の顔ですから、忘れることはないでしょうが、これほど歓待してくれるとは思ってもいませんでしたので、私の方も嬉しくなってしまいました。

沖縄に来てもうすぐ2年になる彼女の表情は、東京にいる時よりもやわらかく、優しい感じになりました。彼女もプロですし、私も客としての節度は心得ているつもりですので、お互いに馴れ馴れしい会話はしませんが、なんとなく東京で向き合っている時にはなかった親しみを感じることができました。

そして、彼女の持っているインターナショナルなスキルも、この職場での方が活かされている印象です。逆にいえば、東京のホテルは彼女の力を十分に活かせなかったということになります。

高度な能力を持っていても、それを発揮する舞台がなければ、充実感や達成感は得られません。彼女を失った東京のホテルは今もクオリティが下がる一方ですが、彼女個人にとっては、沖縄での人生の方が充実しているようです。その様子を見ることができ、心から安心しました。

そのホテルを1泊で名残惜しく出発し、本来ブッキングされていたホテルへと移動しました。こちらはナハテラスとは同じ系列のリゾートですが、私はナハテラスの方がずっと好きです。

大きいリゾートはダイナミックではありますが、ただでさえ慌しい毎日を慌しい大都会で生きているのですから、それと似たようなものは必要ありません。私がリゾートに求めるのは、限りない静寂と心の奥深くに触れる卓越したサービスです。

残念ながらこの有名リゾートホテルにはそのどちらもなく、むしろシティホテルであるナハテラスにはその両方があります。なので私にとってはナハの方がリゾートなのです。

といっても、今回も遊びに来ているわけではありませんので、予定のスケジュールをしっかりと消化しつつ、空き時間を活用して海辺の環境を楽しんでいます。

日中は太陽に恵まれました。風が強く、千切れ雲が急ぎ足で流れて行きますが、雨は降りませんでした。夜は部分月食があり、誰もいないビーチまで出て欠けた月を眺めてみました。

小さなカメラではキレイに映りませんでしたが、地球の影に入らなければ満月ですので、欠けているのはわかりますね。

これは私から皆さんへの気持ちを一番あらわしている看板です。