ひとりの夜はルームサービス

まだ若かった頃は、ひとり旅の目的地でも、食事の時は単身でレストランに出向くのを楽しみにしていましたが、最近はそれも億劫になってきて、なるべく手っ取り早く済ませることに重点を置くようになってしまいました。

そんな時、欠かせないのが24時間営業のルームサービスです。

たとえ深夜2時であっても、ジューシーな作りたてハンバーガーや、淹れたてのフレッシュコーヒーを、とびきりのスマイルとともに運んで来てくれるルームサービス。ちょっとお値段は張りますが、上手に使いこなせば、それだけの価値は十分に感じられます。

メニューにお目当ての料理が見つからない時でも、電話一本で希望を伝えれば、よほど特別なものでない限り作ってくれますし、「ちょっと小腹がすいたんだけど、なにかおススメは?」といった問い掛けにも適切に応じてくれます。

また、中国料理店や日本料理店など、ひとりで出向くには気が引けたり、コースなどでは値が張るという店であっても、ルームサービスなら気軽に単品からオーダーできますし、シーザーサラダと天丼と杏仁豆腐などという感じに、それぞれの店から好みのアイテムを自由にチョイスできる点も便利です。

そして、何より気楽なのは、自分の部屋で食べるので服装に気を使わずに済むこと。どんなにあられもない格好でも、誰にも迷惑は及びません。食事が済んだ後も、電話一本で引き取ってくれます。

これなら、作業が立て込んでいる時でも、それらを中断することなく、時間を有効に使いながら食事を済ませることができます。

昨晩は寿司を注文してみました。感覚的には出前のようなものですが、寿司桶ではなく、会席のようなスタイルで運ばれてきました。

シャリの感じも出前のものほど固めにせず、まだほんのり温もりが残っていました。寿司の他に、先付けや炊き合わせ、吸物、デザートが付いていました。

便利なルームサービスですが、最近は多くのホテルで縮小傾向にあります。営業時間を短くしたり、品揃えが少なかったり。場合によっては、レンジアップするだけの品しかないところもありますが、それではルームサービスとは呼べないように思います。

やはり、いつ入るかわからない注文のためにも、厨房の火を落とさずに構えていること。それでこそ高級ホテルです。大都市圏では街中に飲食店が溢れていますが、辺境の国や地域に行くと、ルームサービスのありがたさをひしひしと感じます。

清潔な環境で普通の料理が食べられる幸せ。何ということのないミックスサンドイッチに涙したこともありました。日本は、全国隅々にまで美味しいものが溢れています。それだけに存在意義も薄れてきたのかもしれませんが、これ以上、すたれないでいてほしいと願います。