今年も山口へ、また来年も

注ぐエネルギーは増大しても、使えるエネルギーがどんどん枯れていくのを実感する今日この頃。つい先日も、わずか3曲を演奏しただけで、心底疲れ果ててしまいました。それだけ内容の濃い演奏ができるようになったと思いたいところですが、どうなのでしょう。

そんな中、長年恒例行事として私を迎えてくれている山口市での演奏会に行って来ました。1日目はディナーショー、2日目はリサイタルという組み合わせもいつも通り。空港でいつも通り出迎えられ、いつも通りに軽くランチをしながら、長々とおしゃべりに興じ、一年ぶりの再会を喜び合います。「ところで、会場は何時から使えるの?」「あら、もう朝から準備できてるわよ」そんなやりとりで慌てて喫茶店を後にし、ディナーショーの会場に駆けつけました。

ロビーから拝借したというクリスマスツリーが飾られたステージには、いつでも音が出せる状態のエレクトーンが。早速、プログラム通りにリハーサルをして、感触を確かめます。ホテルのボールルームは響きに乏しく音がドライなのですが、今回はこのような環境を見越して選曲したこともあり、なかなかよい手応え。夕方までじゅうぶんに時間があったので、体力を消耗しないように気を付けながら、この環境にフィットする弾き方を整えました。

お客様が集まり、食事が始まると、私は長い休憩タイム。この待ち時間に心身が冷めてしまう経験を何度もしてきたので、程よい緊張を維持するよう努めました。また、食事が押して、待ち時間が長くなることはよくありますが、今回はサービスも順調に進み、ほぼオンタイムという素晴らしさ。満を持してディナーショーのステージに上がるのは、初めてかもしれません。その後もとても気分よく、終始集中して演奏することができました。お客様も例年との違いにお気づきなのか、いつもより聞き入り度が高く、音楽会らしい雰囲気でした。

翌日は冷たい雨に。旧県会議事堂の演奏会は、雨になることが多いような気がします。こちらも朝一番でセッティングを終わらせてくれ、すぐさまリハーサルに入れました。ボールルームに比べて格段の響きが得られますが、前日とはプログラムもだいぶ違いますし、重なっている曲目も弾き方を変えなければならないので、細かい調整に時間を割きました。楽屋には香り高いコーヒーと大きな苺が用意され、本番までリラックスして待機。

出番になると盛大な拍手の中をエレクトーンまで進みスタンバイ。そこで大問題発生です。目がよく見えないのです。今回は雰囲気を出すため、会場を暗くし、スポットライトのみでエレクトーンを照らすことになりました。リハーサル時にあれこれ調整し、ほの暗い環境にも慣れたつもりでしたが、本番は外光がふんだんに入る明るいところから登場するため、その差で何も見えなくなってしまったのです。更にスポットライトの加減で、鍵盤の影が濃く出てしまい、黒鍵が3重にぶれて見え、ずいぶんと惑わされました。これを予測できなかったのは不覚です。休憩の時は楽屋を暗くして待機したので、第二部は少しは楽でしたが、結局照明に慣れることなく終演してしまいました。この教訓は忘れません。

終演後は実行委員の皆さんと親睦会。出会いから今日までの道のりと様々なエピソードを思い出しながら、縁に恵まれたことを感謝するひとときでした。来年もまたやりましょうと嬉しい言葉で一致団結。この熱い期待に応えられるよう、また一年精進します。