華麗なるカルテット

今年も佐賀県の小学校を巡回する演奏会が設けられ、3日間で6つの小学校を訪ねました。学校の規模や環境はそれぞれですが、どこでも熱烈に歓迎され、音楽会が終わるときには必ず名残惜しい気持ちになるという、濃密な時間を過ごしました。

エレクトーンを中心に、サクソフォン、パーカッション、ピアノという4人のユニークなカルテットを組み、妥協のない本気の演奏を子どもたちに届けるという初心を貫き続けて12年。管弦楽作品を中心にした聞き応えのある名曲尽くしのプログラムと、何があってもブレることのない一心同体のアンサンブルは、我ながら名番組だと思っています。

「悪いピアニストはいても、悪いピアノはない」という信念のもと、どんなコンディションのピアノであろうと、きっちり弾く米津。たとえば最終日の選曲は、午前中がショパン:バラード第4番、午後はラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番第1楽章。選ぶ米津もお見事ですが、それを瞬きもせずに聴き入る子供たちの姿には、身震いせずにいられません。

波多江は持ち前の美しい音色と親近感を武器に、子どもたちの心に瞬時に入り込み、ものの数分ですっかりヒーローに。石川のドラムスがもたらす圧倒的な躍動感は、まさに床を伝わる振動とともに、体育館をスーパーソニックホールに変えてしまいます。

そこに子どもたちの好奇心が加わると、コンサートホールとは一味も二味も違う化学反応が起こり、まるで夢の世界にいるかのような感覚になることがあります。

それでも、演奏会は一回ごとが真剣勝負。同じ瞬間は二度とありません。いくら阿吽の呼吸でも、ちょっとした気の緩みが綻びを招くことをそれぞれがよくわかっているので、個々の調整はギリギリまで続きます。

そんな彼らと旅を重ねる歓びを、今回ほど強く感じたことはありません。と同時に多くのことに気づかされました。何のために私たちは集まったのか。何を伝えたくてこれらの作品を選んだのか。そして、実際に何を残すことができたのか。

あれこれ思いを巡らせながら、これまでの歩みや、今回の3日間を振り返ったら、また新しい未来が見えてきました。コイツらならまだまだイケる。その破竹の勢いに対し、年寄りが足を引っ張るようなことをしてはいけませんが、私にできることもたくさん残されている気がします。

そう思ったら、とてもいい気分になってきました。