12の歌、12の服、12の物語

平野雅世さんのリサイタルを終え、次の目的地へ向け移動しています。静かな車内にいると、熱狂に包まれた先ほどまでのステージは夢だったのかと錯覚しそうですが、あの熱量は確かに本物でした。

平野さんのオールプッチーニプログラムは、これまで何度か経験しており、毎回たいへんご好評いただいていますが、今回の手応えはかつてないものでした。

さまざまな新しい工夫を取り入れながら、無駄なことを省くにつれ、シンプルゆえの難しさに直面したのが今回です。

12作品からそれぞれ1曲、トータル12曲のプログラムで、曲順は作品の完成順。12着のコスチューム(つまりすべての曲間で着替えがある)。全曲に解説付きだが、歌手はしゃべらず神秘性を確保する。こうした基本条件を満たしながら円滑に進行するというのは、なかなかハードルの高い課題でした。

特に、演者が常に高い緊張感に直面した状態だと、お客様をも緊張させてしまうので、ピークを決めたり、リラックスできるポイントを設けることも必要です。

そうした緩急をどう作るかというのは、やはり実際の本番から経験としてつかむのが一番。今回は大きな成果を得ることができましたので、次の機会があれば、より洗練された舞台をお届けできると思います。どうぞご期待ください。

次の演奏会は、8月14日の茨木「Beauty from the Inner」です。こちらも新しい工夫をたっぷりご用意しておりますので、お付き合いいただければ幸いです。