プッチーニと餅つき

姫路労音主催「プッチーニ、愛の物語」が終演しました。昨日のリハーサルと本番のあった今日一日、ずっと甘美で濃密な音楽を圧倒的な迫力で浴びて過ごし、何とも幸せで充実した思い出となりました。宿に戻りひとり深い静寂に包まれた今になって、公演成功の喜びよりもはるかに大きな感謝に満たされています。

考えてみれば、私のような経験の浅いものが、百戦錬磨のソリストを前にオペラを扱う公演を取り仕切るなど分不相応なことであり、厚かましいにも程があったのではないかと思いますし、よくぞ無事に幕が上がったばかりか、非常に立派な会になったことに対しては奇跡を感じさえします。

これは寛大なご協力をいただいたソリスト方はもとより、私を信じて起用し付き合ってくださった姫路労音の皆さんと合唱メンバーの心意気あってこその成功でして、プロデューサーなどと偉そうな顔をしていましたが、ほんとうは、こうして私に機会を与え、ここまでお育てくださったことに平伏する思いでおりました。

その気持ちを口に出してしまえば、私は気が楽になりますが、遠隔地からじゅうぶんなリーダシップを発揮するには妨げにもなりかねません。そんなところもおおらかに受け止めていただき、何から何まで見事に応えてくれたことに改めて敬意を表します。

平野雅世さん、村上敏明さんには、たいへん見事な歌を聞かせてくださったのみならず、惜しみない協力をいただきましたが、中でも嬉しく思ったのは、合唱メンバーに向けて的確なアドバイスを与え鼓舞してくれたことです。

そんなおふたりに姫路の雰囲気を楽しんでいただこうと、主催はさまざまな工夫をしてくれました。終演後のレセプションでは、花こまによる車人形や餅つきでおもてなし。平野さんや村上さんも杵を振り下ろして餅をつき、それをみんなで味わうという特別な体験もお楽しみいただきました。

レセプションでは賑やかな会話や笑いが絶えませんでしたが、ふと、これほどまでに楽しい時間を過ごす影には、泣いてくれている人もたくさんいるのだろうと思いが巡りました。100人以上のチームですから、すべてが丸く収まるわけがありません。それを丸く収まっている風にしてくれている人たちにも思いが届けられるようでありたいものです。

演奏面でも、今回こそ納得のいくことを成し遂げて、満足できたらもう退いてもいいと考えていましたが、やはり本番ともなれば自分の弱いところが浮き彫りになるものです。隅々まで100パーセント神経の行き届いた振る舞いをするには、まだまだ経験が足りません。もうしばらく皆さまにお育ていただけましたら幸いです。