第44回霧島国際音楽祭開幕!

クラシック音楽夏の風物詩、霧島国際音楽祭が今年も開幕しました。44回続く、日本で最も歴史があると言われるこの音楽祭には、国内外の名手が集い、日夜演奏と指導を繰り広げます。そのオープニングを飾る「県庁ふれあいコンサート」と、毎年大きな期待が寄せられる「霧島神宮かがり火コンサート」にて、エレクトーンを演奏する機会をいただき、晴れやかな気持ちで大役を務めて来ました。

「県庁ふれあいコンサート」は、県庁2階にあるフリースペースに客席を並べての、いわばロビーコンサートのような趣きです。チケット不要で自由に鑑賞できるので、どのくらいお客様がお越しになるのか、始まるまでわかりません。エレガントでアカデミックなイメージのある霧島国際音楽祭に、なんでエレクトーン?と疑問に思うお客様もいらっしゃるでしょうから、もしかしたらお客様がとても少なくて主催者をガッカリさせてしまうかもと、私は気が気でありませんでしたが、開演までには活気に包まれ、賑やかにオープニングを飾ることができました。

開演が12:15なのは、県庁にお勤めの職員の皆さまが昼休みに立ち寄れるように。たくさんの職員の方々が後方で立って見守ってくださいました。鹿児島が舞台の大河ドラマテーマ曲に始まり、今年の音楽祭メインコンサートでも取り上げられるカルメン、そして空間をギャラリーの見立てての展覧会の絵(抜粋)などを演奏。テレビや新聞の取材も入り、夕刻には鹿児島の皆さまにコンサートの風景が映像で紹介されました。きたならしい私の顔がアップでお茶の間に流れたと思うと伏してお詫びすべきところ(特に大画面でご覧の方には言葉もございません)ですが、晴れ舞台に免じてお赦しください。

そして土曜日は霧島神宮のかがり火コンサート。厚かましくも、私はなんと3度目の登場です。いつも最高の共演者に恵まれて来ましたが、中鉢聡さん、大萩康司さんに続く3人目のパートナーは津軽三味線の浅野祥さん。仙台クラシックフェスティバルでの絶賛を受けて抜擢されたコンビです。出演が決まって、内容を考える際、音楽祭の品格に我々はどう合わせていくべきかをふたりで熟考しました。いつも完璧な室内楽アンサンブルを奏でる天才たちが務めてきたコンサートですから、お客様の期待は大きく、絶対にガッカリさせるわけにはいきません。でも、私たちにできるのは、この環境と音楽の素晴らしさを私たちの方法でご満喫いただくこと以外に思いつかず準備は難航します。

神々が護る森、日本の夏、人々の賑わい。これらが合わさったら、自然と心が躍り、開放的な気分になるはず。その脈動に乗っかればいい。あれこれ悩むのはやめ、そう思うことにしました。音楽祭というくらいですから、お祭りでいいわけです。もちろん、音楽祭に名を連ねる者らしい確実な演奏でなくてはなりませんが。

そんな思いで選んだ曲には、クラシックから離れているものも含みつつも練りに練った構成を施し、ガーシュインに始まりハチャトゥリアンに終わる流れで、終演時にはクラシックも聞いたと実感していただけるプログラムが完成しました。

三味線の浅野祥さんは、単音色とは思えない幅広い表情で魅了し、特に名人ならではの「津軽じょんから節」に超満員の会場はおおいに沸きました。エレクトーンもまた変幻自在の演奏で華を添えます。オーケストラのようだと思えば、ビッグバンド、フラメンコ、クラブサウンド、能楽の響き、祭りのお囃子などなど。浅野さんの明るく伸びのある声で歌われる民謡とも、絶妙な調和を見せました。演奏中にはムササビが飛び、「おはら節」ではお客様が自然と立ち上がり、踊りの輪ができるという夏祭りそのものの風情に、私たち奏者も気分が高揚しました。

公演翌朝、新聞のどこかに紹介されているだろうと、紙面をめくるも、なかなか見つかりません。今年は載らなかったのかなと閉じたらびっくり。なんと1面に大きく掲載されていました。それほど地元の皆さまに愛されている催しなのですね。

午後からは音楽祭の中心地となる「みやまコンセール」の演奏会へ。大ベテランの圧倒的な演奏と息を呑む繊細極まりないアンサンブル、そして若手に感じる素晴らしい未来。音を介して対話する奏者の姿を見ながら、世界のリーダーたちがこのように主張と受容のバランスを保てたなら、世界はもっと整うのにと思いました。政治家はもっとクラシック音楽を聴くべきです。

終演後はお待ちかねの交流会。地域の名産やご当地の味覚がずらりと並ぶブッフェパーティです。県知事からアーティストを紹介するシーンがあり、私も並ばせていただいたのですが、こんなすごい人たちと一列になっていいの?と、光栄というより場違いにしか思えず顔が引きつりっぱなし。名前が並んでいるのを見るより、顔が揃っている図の方がよほど迫力があって、最強のメンバーだと改めて実感しました。

この後も霧島国際音楽祭は8月上旬まで続きますが、私の役目は終わり、後ろ髪引かれながら下山しました。私の野心は、いつかここでエレクトーンのマスタークラスを設けてもらうこと。エレクトーンで本格的なクラシック演奏を学んで世に出たい人々が、世界中から集う登竜門になればと夢見ています。私が生きているうちに叶わなくても、誰かが実現してほしいものです。

霧島国際音楽祭公式サイト

県庁ふれあいコンサートの新聞記事(南日本新聞)

https://373news.com/_news/storyid/178909/

かがり火コンサートの新聞記事(南日本新聞)

https://news.yahoo.co.jp/articles/5b53464013602f9bc4e33db7e11916542cb9228c