原始時代

本来なら、今ごろは霞町音楽堂の頼れるスタッフに見守られつつ、古川展生さんとのリハーサルを終え、ご来場のお客様を自信とともに笑顔でお迎えしているはずでした。

しかしながら、私は体調を崩して、公演を延期するという事態に甘んじ、ベッドで静かに逃してしまった機会に思いを馳せています。ああ、ほんとうに悔しい。

激しい疲労の中で一時的に抵抗力が著しく低下している中、わずかな傷口を放置したことによる感染症で、しばらく高熱に苦しみ、肺炎を併発してからはサバイバルそのものでした。ただ生きることを考える機会など、現代生活においてはほとんど経験できません。

しかし、人間というのは恐ろしく欲深いもので、ひとたび命の危険が去れば、予定通り弾けたのではないか、延期の判断は甘かったのではないかと、責任を果たすべきだったとの欲求と、叶わなかった失意が押し寄せて来ました。

すべての社会活動を中断し、デジタルコネクトをも絶っていたので、生活自体は原始時代のものに。しかし、それがいかに平和であるかを知り、現実に見て触れるものだけに囲まれることがいかに美しいかを感じるきっかけとなりました。

そして、やっとメールやSNSのコメントに目を通し始めることができ、皆さまの優しさに感涙を浮かべるひとときです。まだ、一度に数分がやっとなので、すべてに目を通すには時間を要します。

「ゆっくり休んでください」と、体調を気遣い、健康管理に失敗した私の過失を優しく包んでくださる数々のことばに心を温める一方、天邪鬼の私は「休んでなどいられるものか!」とか、「そんな、あんたなんかおらんでも誰も困らんみたいに言わないでよ」と、むしろ反骨精神に火がついて、一刻も早い復帰を目指す原動力を頂戴しました。満身創痍のヒーローが病院を抜け出し悪を成敗しに向かうがごとく。何はともあれ、モチベーションを与えていただき、感謝にたえません。

おかげさまで体調は快方に向かっています。気分的には絶好調です。古川展生さんとのドヴォルザーク&ピアソラナイトの日程も早く決めたくてうずうずしています。

神田将は不死身ですから、演奏を聴いていただければきっとご利益もあるでしょう。なんて、これ以上言うと妙な宗教みたいになりますからこの辺で。引き続きご贔屓にお願いいたします。