山口へ三日間の旅は、喜怒哀楽を網羅しつつ、人生の縮図を辿るひとときでした。
最も心配していた、体調の演奏への影響については、ほとんど問題なく、ふたたび自信を取り戻せたのが何よりの成果です。しばらく休んだことで、いろいろ限界に達していたものがリセットされたのか、演奏中は体が軽く感じられました。
でも、演奏というのは、結局のところ、精神状態で決まるというのが率直な感想です。
この日もいろいろありました。開場前には、こうなってしまっては、高い確率で公演は中止だという事態になっていました。誰が悪いとかいうことでなく、小さなことがあれこれと重なってしまったのです。
お客様にご満足いただける音楽をご提供するのが難しくなった時は、きっぱり引き下がるべきというのを今回の体調不良で学びましたが、こうも早い機会にそれを試されることになるとは思ってもいませんでした。
ちょうど公演と同じ時間帯に、隣室で会議が行われており、音量を控える必要が生じたのですが、演奏曲目の中にはそれなりの迫力が欠かせないものもあり、どう対処するのがよいのか悩みました。
隣室に迷惑を掛けるのも本意ではありませんし、かといってsotto voce のgrandioso なんて弛んだ褌や冷め切った料理のようで話になりませんから、曲目を変えるしかありません。
お配りする予定だったプログラムを回収して、急遽プログラムを組み直しました。印刷は間に合いませんから、曲目は口頭でお伝えすることに。
開演2分前、会議にも休憩があるのでは?と思いつき、マネジャーに聞きに行かせると、ちょうどいいタイミングで転換休憩があることがわかり、その時にダイナミックな曲を当てはめられるよう調整することにして開演しました。
いざ、ステージに出てみると、回収予定だったプログラムがすでに配布されてしまっていることがわかりました。こうなったら事情を話してご理解いただくしかありませんが、お詫びというのも雰囲気を崩します。もう笑い話にしようということで、いつも以上に冗談の多いトークになりました。
私としては、今日のお客様のために丁寧に準備したプログラムで演奏したかった。でも、何かが起こった時は、臨機応変にやる柔軟性も必要ですね。お客様にご満足いただくのは大前提で、結果的には隣室の会議にもご迷惑が及ぶことなく、すべて丸く収まりました。
お客様にはお楽しみいただけたのでしょうか? 皆さまとてもよいお顔でお帰りになりましたので、きっとよい時間をお過ごしくださったとは想像しておりますが。もしよろしければご感想などお書き添えいただけたら幸いです。








