肥薩おれんじ鉄道

連休最終日で大混雑する博多駅から、九州新幹線さくら号に乗車。わずか70分で出水駅に到着したら、今度は肥薩おれんじ鉄道に乗り換えて、鹿児島県阿久根市へ。最新鋭の新幹線と、のどかなローカル列車。どちらもそれぞれに魅力たっぷりです。

九州新幹線では、博多を発車するとすぐに、客室乗務員が肉声で挨拶。録音放送とは違い、親しみとともに安心感が伝わってきます。一方、肥薩おれんじ鉄道では、ふだん利用する鉄道にはない体験が待っていました。

まずは出水駅で切符を買う時のこと。主要駅には切符の自動販売機が設けられており、そこで阿久根までの切符を買い求めようと運賃表を見上げていたら、詰所からおばさんが「どちらまでですか」と声を掛けて来ました。阿久根までは、610円だそうです。

10円玉がなかったので1,050円を差し出すと、「10円はお持ちじゃない?」とおばさん。財布を広げて小銭を探しながら「5円玉ふたつならあるけれど・・・」と苦笑いの私。

するとおばさんは「もちろんいいですよ、同じお金ですもん。ありがとうございます。」と微笑んでくれました。切符を買う時にこんなやり取りで笑い合えるなんて、都会ではちょっとないかもしれません。

次の発車は快速オーシャンライナーさつま号。さてどんな列車でしょう。わくわくします。のりばに行ってみると一両編成の気動車が、これは快速じゃないかも。でも、他に列車は停まっていないし・・・。

しみじみ行き先案内を見ると、やっぱりこれがオーシャンライナーです。車内には他にお客さんがひとりだけ。発車ギリギリにあとひとり乗りこんで、総勢3人の乗客で出発しました。

もともとJRの主要路線ですから全区間電化されていますが、走っているのは気動車。エンジンのにぶい音も旅情のひとつです。窓からは黄昏間近な空と、沿線の田園風景が広がります。4人掛けクロスシートをひとり占めしても、誰にも迷惑は掛かりません。

ぼんやりと外を眺めていると、見知らぬ町の景色がゆっくりと過ぎ去っていきます。そろそろ人生も新幹線からローカル列車に乗り換えたくなってきました。

阿久根での宿は、高台に佇むグランビュー阿久根。元は国民宿舎だったそうです。建物は古いのですが、眺めは格別。温泉浴場もあり、地元の人たちにも日帰り入浴が大人気です。明日からの鹿児島巡回公演に際し、他の出演者やスタッフとはこの宿で待ち合わせ。合流したら宿の食堂で早速夕食です。

料理はメニューから自分の好みで注文。それぞれマイペースにというのが、私たちチームの旅のスタイルです。阿久根は港町ですから、魚料理が自慢。その魚がたっぷり味わえる定食を選びました。

造りにはキビナゴが入っています。光りものは苦手なので、恐る恐る食べてみたのですが、あれ?美味しいじゃないですか。新鮮なものを適量であれば、好んで食べられることがわかり、苦手をひとつ解決できました。

キビナゴの天ぷらやブリのしゃぶしゃぶも美味。アジの塩焼きとみそ汁は後からサービスされます。なんだかご飯が進んでしまって、珍しくお代わりしました。

米津さんは別のものを注文していましたが、彼が何を食べたかは米津さんのフェイスブックで。

食後はチョコレートアイスクリームを。あぁ、幸せだなと思いながら、ふと数時間前までいた福岡の喧騒を振り返ってみました。この穏やかな時間と果てしない風景。これからの人生に必要なのは、こうしたひとコマの積み重ねなんだろうなと気付きました。