安中市国際交流協会15周年記念コンサート

昨日に続いて群馬県での演奏です。ゆうべは妙義山のふもとにあるホテルに宿泊し、雄大でユニークな妙義山の絶景とともに朝を迎えました。ひんやりと冷たい空気で深呼吸し、気持ちを引き締め、いざ会場へ出発です。

ホール入口では、TANEちゃんと星野隆行が東京から駆けつけて待ち構えていました。ちょうどエレクトーンが搬入され、早速舞台セッティングに取り掛かります。

ところが早々に機材トラブル発生。エレクトーンの機能に問題はないのですが、楽器を支えるための部品に損壊があり、バランスよく設置することが難しい状況です。すぐに運送してきたスタッフを呼び戻しますが、予備の楽器を積んでいないので、応急処置を始めることに。

その間にも、どんどんリハーサルのための貴重な時間は失われていきます。いずれにしても、この楽器で本番を強行することは妥協にほかならず、お客様を欺くことになってしまいますし、これ以上時間を無駄にできないと判断。直ちに代替楽器の手配を依頼しました。

現在のエレクトーンは極めて精巧に造られており、機械的なトラブルはほとんどありません。しかし、新機種の発売がないために、かつない長い期間に渡って同じ機種が現行最新型になっており、物理的なトラブルの頻度は年々高まっています。

今後は、現場でやきもきすることのないよう、どのようなコンディションの楽器が搬入されるのかについても、事前によく相談しておく必要があると痛感しました。

そんなわけで、午前中は不十分な楽器のままで歌手の大山さんとリハーサル。自分だけのことならまだしも、初めてエレクトーンとの本番にのぞんでくれる共演者に心配と不便を掛けるのは、本当に申し訳ない気持ちでした。

と、そこに代替楽器が到着。遠方から運んできてくれたのに、期待以上の迅速な対応です。トラブルはあっても、こうして皆さんが熱心に協力してくれるので、いつも乗り切れるのです。新しい楽器になって、やっとコンディションが安定し、思い通りのタッチ感で弾けるようになりました。

一通りのアンサンブルをリハーサルした後、大山さんとスタッフには昼食休憩を取ってもらい、私はひとりステージに残って、ソロのリハーサルです。

時間が経つのはあっという間。全曲を弾けないうちに、開場時間が迫り、リハーサル終了。あとは、本番の幸運を信じるしかありません。大山さんとのリハーサルで、要注意箇所としてマークした部分を確認する時間もありませんでした。

やがて迎えた本番。800席ある安中文化センターは、ほぼ満席の賑わいとなりました。まずは国際交流協会を代表して、フィリピンから来日しているメンバーたちによる華やかなダンスが披露されます。

続いて私のソロ演奏。私好みの控え目な照明の中、ムードのある曲が続きます。じゅうぶんなリハーサルは出来なかったものの、不思議と気持ちが落ち着き、穏やかに、そしてゆとりを持って弾くことができました。

45分のソロが終わり、10分の休憩。そして大山さんを迎えた第2部のスタートです。大山さんとは9月に一度合わせをしただけで、今日が2回目。歌い手は本番で必ず「化ける」ので、リハーサルでつかんだ情報は、さほど役に立たたず、本番に勝負を掛けるしかありません。

大山さんはリハーサル時にも、かなりの声量で歌ってくれていましたが、やはり本番は「大化け」しました。ブレスの感じも、歌い回しも、ぐぐっとアップ。会場が感嘆のため息に包まれる素晴らしさです。

私の務めは、大山さんに余計な心配をさせず、一点、歌にだけ集中してもらうこと。それ以外のことは、すべて私が引き受けるという覚悟。それが共演者の実力を最大に引き出す秘訣です。

大山さんの歌は5曲。いずれも素晴らしかったのですが、やはりイタリアオペラのアリア2曲は圧巻でした。会場からは割れんばかりの拍手。今日もまたお客様から元気と自信をいただきました。

最後には会場の皆さんもご一緒に、全員で「ふるさと」を大合唱して、興奮と熱狂の中で、幕を下ろしました。当日を迎えるまでに、多大な努力をしてくれた安中市国際交流協会の皆さんと、ご来場のお客様に心から感謝します。