仙台クラシックフェスティバル2012を終えて

昨日は、米津さんとのコンチェルトを終え、その余韻を満喫することも、関係者たちに感謝の気持ちを十分に伝えるゆとりもなく、台風で混乱が予想されている新幹線へと急ぎました。定時に出発した新幹線は、福島を過ぎたあたりから強い雨に打たれ始め、まさに荒れた天候の中へ向かっているのだと感じさせながら、東京へひた走ります。

私の1週間も、まるで台風のようでした。巨大な渦に巻かれ、目も開けられないような日々が続いても、通り抜けてしまえば、なにごともなかったかのような穏やかな時間です。しかし、無事に通り抜けられたのは、ひたすら準備を重ねたからでもありますし、ほんとうの台風と大きく違うのは、巨大な渦が私に残したものが、ワンランク上の自信だったことです。

新潟でのカルメンで激しく消耗しきって仙台に入り、そのままのコンディションで迎えた初日のことを思い出すと、今でもぞっとします。いえ、冷静な今だから、更に恐怖の度合いが高いかもしれません。

そんな私でも、仙台のお客様は私に期待を寄せ、温かいまなざしで見守ってくれました。スタッフの皆さんも、私が少しでも演奏しやすいようにと、それはもう細かく気を遣ってくれたものです。

カルメン本番前日に新潟へ向かう時の私は、孤島に取り残されたような寂しさを抱えていましたが、新潟で仲間たちと熱演し、仙台で皆さんに支えられ、気付けば大勢の方々とのつながりを実感していました。これも音楽が与えてくれたもののひとつです。

最終日のコンチェルトは、本当に爽快でした。あの瞬間に今すぐ戻りたいくらいです。長く苦しい日々を乗り越え、ひとつのピークをクリアしたという実感が、いつにない胸の高鳴りを呼び起こしたのでしょう。

私にとって一年で最大の試練となるのは、いつだって東京でのリサイタルです。今年は実施しないので、その試練が持てないことを残念に思っていましたが、新潟と仙台でそれが与えられ、「私はこれをやり遂げた」という実感を、またひとつ重ねることができました。

昨晩は、さすがに体力が限界に達したのか、まるで麻酔銃で撃たれたかのように、次第に体がしびれていく感覚の中、美しい音楽を奏でている夢を見ながら休息。今朝からはまた体力維持のため、早速プールへ行ってきました。

次のピークを乗り越えるために、新しいスタートを切りました。ぜひまた、バージョンアップした神田将の演奏を聞きに来て下さい。皆さんと共に前へ進んでいきます。