小樽さんぽと海猫屋

どこまでも続く空。梅雨と無縁の北国で迎える朝は実に気分爽快です。午前中は一周忌法要に列席。経の特殊な音階とリズムに酔いしれたり、ありがたい話に頷いたり、懐かしい顔ぶれと談笑したり、そこにいない故人の和が、まだ確かに息づいていました。

午後になり散会。思えば小樽の街をそぞろ歩くことなんて、ほとんどしたことがありません。アジアからの観光グループが往来する中、メン・イン・ブラックさながらのいでたちでひとり歩くのはかなり浮きますが、いざ決行。

運河近くには、土産物店や菓子店が立ち並ぶ観光ストリートが。道端ではモロコシをかじったり、カットしたメロンを頬張ったり、気ままに散策する人たちの笑い声が聞こえます。

古い建物を見事に利用した店もあれば、古城を模したような瀟洒な店も。中でも、LeTAOの栄華には目を見張るばかりです。久しぶりに北一ガラスを覗いてみたり。冷たいガラスに、温もりを感じるから不思議です。

でも、私が見たいものは観光ロードにはきっとありません。ちょっと横道にそれてみましょう。

勾配20%とは、かなりの急坂。小樽にはこうした息切れ必至の急坂が、無数に散在しており、ひとつひとつに歴史とドラマがあります。

のんびりと坂を上がっていると、脇を速足で過ぎてゆく人が。元気なアスリートかと思いきや、おばちゃん、いやいや、おばあちゃんです。重たそうな買い物袋を提げていても、足並みはしっかり。さすが地元っ子です。

いくつかの坂をアップダウンしながら、街の風情を楽しみました。冬には深い雪に閉ざされる小樽。でも、この短い夏の素晴らしさは格別です。冬が終われば一気に夏になる北国。この夏があるから、厳しい冬を越えられるのかもしれません。

さて、また観光地区に戻ってきました。北のウォール街と呼ばれた場所には、石造りの立派な建物が連なっています。そのうちひとつは運河プラザになっていて、中は土産物とスイーツショップに。

せっかくなので、「あまとう」という老舗で人気の、ソフトクリームを使ったパフェを試してみることにしました。醤油味のシロップというのに興味を惹かれ注文。「SサイズとMサイズがございますが」と聞かれ、Sサイズではショボイだろうと想像し、選んだのはMサイズ。

で、出て来たのがコレ。さすがの私も、てんこ盛りソフトクリームにはビビりました。どうやらふたりで食べることを想定しているらしく、スプーンがふたつ添えてあります。これはMというよりL・・・。もしくはダブルサイズと言った方がいいかも。

底にはたっぷりの粒あん。そしてひたすらソフトクリームを絞り、醤油ソースをトッピング。アウトドア席で、街並みを眺めながら味わいました。もちろん完食。

そろそろ夕食の約束場所に向けて歩きだすのに、程よい頃合いです。せっかくなので、運河沿いを行くことにしました。

運河脇では、人力車の担ぎ手たちが、道行く観光客に熱心な売り込みをしています。ところが、メン・イン・ブラックには見向きもしません。これも経験ですので、声が掛かれば乗ってみようと思っていたのですけれど、縁がありませんでした。

私にしては珍しく路地を選び損ね、やや迷いながら海猫屋へ。店先には花がいっぱい!

中ではすでに待ち合わせの顔ぶれが待っていました。小樽ワインで乾杯して、前回までは必ずこの場にいたはずの人を偲んで、思い出話しに耽ります。料理は軽くアラカルトで。

シーザーサラダ。裏側に隠れて見えませんが、真っ青なトマトが夏味でした。

夏の小樽ですから、雲丹!周囲はしめサバでデコレーションされています。昼顔の花がトロピカル料理を思わせるアクセントに。

ピッツァ・マルゲリータ。超薄生地をパリッとサクッと。大きすぎないサイズが嬉しい。

アサリのシンプルパスタ。ボンゴレビアンコに、和テイストの隠し味が。

他にも美味しい料理がたくさんありますが、今回はこの辺で。ホテルも快適ですし、散歩も楽しかったけれど、海猫屋に来てやっと「小樽にいるんだ」という実感が。自分が生きていることの意味をしみじみと思う小樽の旅でした。