アピシウスのV.G.E.黒トリュフスープ

シンガポールから休暇で一時帰国した友人夫妻とともに、東京での再会を祝して有楽町のアピシウスでランチ。店先でちょうど落ち合い、一緒に店への階段を下りました。

すると音もなく扉が開かれ、メートルドテルがにこやかに出迎えます。コートを預けて早速ダイニングホールへ。落ち着いた照明に浮かび上がる名画や彫刻、そして美しい花々。グランメゾンの気品と風格が漂う空間に気分も高揚します。

日曜日は定休日ですから、週末に訪れるなら土曜日。平日は男性の方が圧倒的に多いようですが、今日はマダムたちがたくさん。賑わいもひとしおです。

ロゼシャンパンを傾けながら、久しぶりに日本に帰った視点から、今の日本がどう見えるかなど、すぐに会話に花が咲きました。

パラダイスのようなシンガポールと比較しても、日本の活気は引けを取らず、端整な街並みや雰囲気はやはり格別の印象だそうです。今も日本は美しい国なんですね。安心しました。

そんな会話をしながらも、メニューを隅々まで眺めます。今日はアラカルトで行こうと決まりました。グランメゾンのアラカルトはボリュームたっぷりですが、アピシウスでは多くの品にスモールポーションを用意しているので、女性も気兼ねなく好きな料理を楽しめます。

シャンパンとともにテーブルに用意されたオリーブをつまみながら、気になる料理を絞っていく。この時間もまたレストランの醍醐味でもあります。

それぞれに皿数が揃うようにするのがスマートですので、同席者が何を注文するのかも意識しながら選びます。

今日は前菜と主菜の2品で行くことに。フロマージュやデセールは、メインが終わった時の腹具合で考えます。注文が済むと、ちょっと気分が落ち着くので、今度はじっくりと店内を観察。

十分な人数が揃ったサービス陣は、貫禄たっぷりのベテランから、初々しい青年(というかほとんど少年)まで、幅広い顔ぶれ。給仕の動きを見ているだけでも、ちょっとしたショーのように楽しめます。そうこうしているとアミューズが運ばれてきました。

それからしばらく時間が空いて、前菜。私のチョイスは冬のアラカルトから、エリゼ宮にてV.G.E.に捧げる黒トリュフスープパイ包み焼き1975。ポール・ボキューズレシピによる伝説のスープを味わうのは久しぶりです。

パイを割ると、中からトリュフのリッチな香りが弾け、一撃で悩殺されてしまいますが、最後の一滴まで野菜のブイヨンが体に染み渡り、心も体も温まります。

パイ包みスープで結構お腹いっぱいになることを想定して、メインディッシュは軽やかな品を選びました。新鮮な冬の甲殻類のペルシャード。オマール、ラングスティーヌ、ずわい、タラバが盛り合わさり、野菜やフルーツとともに賑やかな花畑を見せてくれます。

サイドディッシュはクレソンのサラダ。ドレッシングのレシピを聞きたいのをグッと我慢しました。

結構満腹になりましたが、やっぱりデセールの魅力には勝てません。マンダリンオレンジとショコラジャンドゥーヤのスフレ。ふんわりスフレの中身は、ちゃんとオレンジとチョコレートの二色になっていました。

コーヒーの器も上品です。

最後は小菓子を囲みながら、まだまだ会話は盛り上がります。これも心地よいレストランでの美味しい料理が、盛り上げ役になってくれたからかもしれません。

レストランで食事をしたという実感を強烈に残してくれるアピシウス。長い間愛され続ける理由がよくわかりました。