神田将トリオコンサート in 沖永良部島

鹿児島空港から小さなプロペラ機で1時間30分の旅。ほとんど雲に覆われた景色の中、時折雲の切れ間から覗く海の青さには、やはり胸が躍りました。降り立ったのは、1年ぶりの沖永良部島です。

どうやら雨にならずに済みそうですが、風が強く、気温も低め。前日までは半袖で十分だったというのですから、沖永良部島は南国のパラダイスです。素朴な風景や大自然とたわむれたい気持ちを抑え、コンサート会場へ直行しました。

入口にはコンサートのポスターが掲げられ、ホール内ではすでにステージの準備が進んでいます。

早速、楽器の位置を決め、ひとまず楽屋に入ってランチタイム。島のおかあさん手作りの品々に、心も和みます。

食後にはコーヒーとともに、これまた手作りの島スイーツが振舞われました。さりげなくブーゲンビレアがあしらわれ、風景の見えない楽屋にも南国らしさを運んでくれます。

食事が済んだら、早速コンサートの準備を詰めていきます。まずは音作り。音響は毎年サポートしてくれる島のエンジニアさん。まったく響かない環境の中で、私たちの細かい要望に熱心に応えてくれます。

それでも、なかなか思うようなサウンドに仕上がりません。演奏プログラムの曲想が繊細なものからダイナミックなものまで多岐に渡り、ピアノソロからアンサンブルまで、演奏形態もさまざま。

どれかに照準を合わせてしまうと、どこかのピントが狂ってしまうという厳しい状況で、ギリギリまで調整をして、なんとか演奏方針を決めることができました。

そして照明。できる演出は限られているのですが、その中で少しでも演奏会らしい雰囲気を作ろうと、工夫してみました。最初の状態と比べると、だいぶムードがでたと思います。

開演までには十分な時間があったので、交代で周辺の散策に出てもいいねと話していたのですが、結局、全員がそれぞれにリハーサルに勤しみ、気がつけば開場時間が迫っていました。

そこに、エージェントから「夕陽がきれい」とのインフォメーションが。夕陽が美しいのはほんの一瞬です。それを逃すまいと、カメラを片手に、猛ダッシュで道に出てみました。

燃えるような雲と、土地のシルエット、そしてあまりに広い空に圧倒される景観でした。

さあ、いよいよコンサートがスタート。まずは私がソロを3曲。ステージから客席を見ると、ほぼ満席です。年々、皆さんが一層の感心を寄せてくれるようになり、前年にひとりで来た方がご家族で来てくれたりと、確実に輪が広がっています。

そして米津さんのピアノソロ2曲。今日はとりわけ緊張すると、楽屋で固まっていたのですが、本番ではさすがと唸らずにはいられない見事な演奏を聞かせてくれました。

続いてピアノとエレクトーンのデュオ、サクソフォンとピアノのデュオ、サクソフォンとエレクトーンのデュオと、すべての組み合わせを、それぞれ最適な選曲で披露。

それからフィナーレまでは、3人での情熱的な演奏でぐんぐん盛り上げていきました。お客様もそれにシンクロして楽しんで下さり、ステージと客席が一体となれた気がします。

ステージから客席を見ると、子どももたくさん来てくれていましたし、おじいちゃん、おばあちゃんの姿もありましたが、皆さんとてもステキな笑顔だったのが印象的でした。

あっという間の90分。波多江さん、米津さんとは5日間で9回のステージを共にしましたが、これでまたそれぞれの活動に戻り、しばらく会えなくなることでしょう。そんな思いもあって、フィナーレを完全燃焼で飾ることができ、気持ちのいい夜となりました。

終演後は、島のミュージシャンによる「お返しライブ」がありました。今度は私たちが客席に座り、ステージでの演奏に酔いしれる番です。この日のために用意してくれた演奏に耳を傾けながら、音楽って本当にいいものだなとしみじみ思いました。

打ち上げ交流会も和やかで楽しいひとときでした。ご来場のお客様はもちろん、今回の公演で尽力下さった和泊町芸術文化推進実行委員会の皆さん、和泊町教育委員会の皆さん、そして受付その他、さまざまなシーンで力を貸して下さった皆さん、本当にありがとうございました。