第九三昧

火曜、水曜と食事以外は一切外出せず、24時間体制で稽古に勤しんでいます。特に睡眠時間を設けず、疲れて集中力が持たないと感じたら一休み。すぐに蘇生してまた楽器に向かうという繰り返しです。

9月中旬から徐々にステージに向けてモチベーションが上がって来ていましたが、リサイタルを機に完全復活。幸せいっぱいだったリサイタルの余韻を満喫する間もなく、次々に予定されている演奏会の準備に追われています。

中でも最もウェイトを占めているのが30日に山口で開催される第九演奏会の稽古。これをひとりで弾くのは、グランドオペラ全幕をひとりで伴奏するよりもたいへんです。

モーツァルトからブラームスあたりまでの作曲家による作品は、むしろオーケストレーションがシンプルな分、エレクトーン一台では弾きにくく、無茶な体勢を強いられることしばしば。

ゆっくり丁寧に弾けば大丈夫なのですが、アドレナリン全開を思わせるような凄まじいパワーを生み出すには、太平洋を一気に飲み干してやる!くらいの意気込みと勢いが必要です。

私にとって第九最大の魅力は、その麻薬的な快感です。ひとりで稽古していても、突如神経に電撃が走り、「ああ、今私は確かに生きている!」と強く実感することが何度もあります。

それをもっと満喫するためには、正しく弾くことに神経を奪われないよう、もっと弾き込んでおかなければなりません。

でも、毎日第九だけを弾いているわけにもいかず、各地でのソロコンサートのレパートリーや、他のアンサンブルの準備も同様に大切です。

ひとつひとつすべてのステージに全力を投じているのは紛れもない事実ですが、その準備期間が限られていることが毎回歯がゆくてなりません。

さあ、明日からはまた旅。どんな人々と出会えるのか、楽しみに出掛けたいと思います。