門下が主役の演奏会

私が稽古をつけている特待的門下生は現在3人いますが、楽器に向かって一緒に音楽を練っていくことばかりでなく、さまざまな経験をさせてやりたいと思っています。そのひとつが演奏機会を設けてやることです。

4月の上海公演前日、私に許されたリハーサル時間をの一部を割き、同行した門下生に世界の舞台を体験する機会を与えました。

門下生にとっては、会場内にいるだけでも感じることや学べることは山ほどありますし、本番だけなく、リハーサルの様子をつぶさに見れば、さらに大きな刺激になります。

でも、舞台で実際に演奏する気分だけは、傍から眺めていただけでは感じとることができません。そこで、門下生をステージに呼び、今から30分自由に弾いていいと伝え、私は舞台を降りました。

これにはもうひとつ、私が客席のあらゆる場所で音響をチェックできるという、大きなメリットもあります。

実は、演奏している位置だと、自分が奏でている音がよく聞こえて来ません。プロセニアムスピーカーという、舞台よりも客席に近い位置にあるスピーカーを使用していたため、舞台に聞こえるのが遅れた反射音のみだからです。

この環境でいつも通りの演奏をすることがどれほど困難か、門下生はそれを一番強く感じたことでしょう。

そして、リハーサルを見守るスタッフやプロデューサーたちに、青春をかけてこの楽器に取り組んでいる若者が大勢おり、エレクトーンの世界が実はとても奥深いことをイメージしてもらう上でも効果的でした。

さて、この時は門下生が演奏できたのはリハーサル時のみ。でも、本当の手応えはお客様の前で弾かなければつかめません。そこで、門下が主役の演奏会を計画していくことにしました。

私の特待門下生3人、古くからの弟子たちが数人、それぞれ日本中、てんでバラバラの地域に住んでいるので、一度に顔を合わせる機会がありません。

また、大勢でステージを組むと、ひとり当たりの持ち時間が短くなってしまいます。お客様を遠くまでお呼びするのも簡単ではありません。

だったら、地域ごとに準備のできたところから順次進めていけばいいと思い、まずは香川からスタートすることにしました。

まずはふたりの門下生にそれぞれ30分ずつのプログラムを組ませ、そこに東京の音楽大学に行っている先輩にピアノで加わってもらい、3人でステージを作り上げるという企画です。

お飲み物代として500円を頂戴する代わりに、私がゲスト演奏を少々。まだおしゃべりがままならない門下のために、司会役も名乗り出ました。

門下生には、成長や成果のご披露にとどまることなく、皆さまに音楽をお届けするという使命感や責任感を持ち、それを演奏エネルギーに変えていく方法をつかみとってほしいものです。

8月23日の開催ですが、約100席の会場はすでに満席とのこと。私よりもずっと集客力があるようで、頼もしい限りです。また、当日の様子をレポートしますのでお楽しみに・・・