小樽のゴッドマザー

今日は急遽すべての予定を変更して小樽に来ています。真夏の北海道はおおぞらとふわふわの雲、そしてみずみずしい花々に囲まれ、天国のようです。

私が小樽と深い縁を持つようになったのには、ふたつの出会いがあったから。ひとつ目の出会いはまだ二十歳になったばかりの頃のこと。それは苦くも甘い思い出です。

ふたつ目は1998年の夏、国際ソロプチミストマリン小樽のチャリティーディナーショーに初めて呼んでもらった時に始まりました。その人が小樽のゴッドマザーと呼ばれる素敵で豪快なおばあちゃんです。

そのおばあちゃんは縁のあった人をとことん大切にし、長年看護師として活躍してきたので、誰にでもとても細やかに世話を焼いてくれます。

私はこのおばあちゃんから、人に親切にするには中途半端なことではだめなんだ、やるからにはとことんするべきなんだということを学びました。

時折、私が駆け引きに敗れて落ち込んでいると「今に見ておれ!」と勢いづいて、次に進む意欲と力を引き出してくれたこともあります。

神田将後援会が発足してからはずっと会長を務め、悲願だった例年のリサイタルや海外公演の実現にも尽力して下さいました。

そのゴッドマザーが爽やかな夏の午後に息を引き取りました。つい数日前には「小樽はいい季節になったから遊びにいらっしゃい」と、丁寧な手紙をもらったばかり。

人の死や、受け入れ難い悲しみを乗り越える術は心得ているつもりですが、今夜ばかりは、音楽を聞きたくてたまりません。