goodbye beijing, hello shanghai

ほの暗いうちに北京の宿を出発し、空港へ向かう途中で夜が明けました。北京の風景は色彩がとぼしい上に霞みがかかっていて、どこか記憶の彼方を旅してるようです。

ところが空港に着くなり夢から覚めました。まだ早朝だというのに、人、人、人!どのチェックインカウンターにも長蛇の列ができています。

今日のフライトは北京から上海への国内線で、手配されているのは中国南方航空便。腹をくくって並ぶしか道はなさそうです。

途中、何度も横入りをされながら、30分ほどでチェックイン完了。次は保安検査ですが、こちらも殺気が感じられるほどの混雑で、秩序がほとんどありません。

我先にと押し寄せる人波に圧倒されながら、なんとか前の人の後をぴったりと追って、ゲートを通過することができました。

売店に立ち寄り、北京に来て初めてのコーヒーを買いました。ハーゲンダッツのアイスクリームにも惹かれましたが、それとコーヒーを合わせると、先日の北京ダック丸ごと一羽よりも高くなるので却下。おそるべし空港価格です。そしてそのコーヒーのぬるいこと。私の体温の方が高いくらいでした。

機内への搭乗はスムーズにいきました。シートに腰かけて出発を待ちますが、ドアクローズをしてからもなかなか駐機場を離れません。やがて機長から空港混雑により待機中とのアナウンスがありました。

搭乗してから待つこと50分。やっと北京の空へと飛び立ちました。時計を見ると、空港に到着してからすでに約3時間が経っています。

なぜ中国の皆さんはいつも慌しいのかが不思議でしたが、こうして至るところで待たされるのが日常であれば、時間を有効に使うのは容易ではありませんので、人生を有意義にするには慌てるしかないような気がしました。

上海に到着。北京に比べると訪れる頻度が高いせいか、上海の雰囲気に接した瞬間に安心しました。車中から見る街の風景も北京よりは色彩が豊かですし、街全体からエネルギーが溢れ出ている感じがします。

北京はスケール感があり、首都としての威厳に満ちています。一方、上海は西洋との接点から広がった洗練が漂っています。同じ国にある代表的なふたつの都市ですが、その違いの大きさは想像以上でした。

当初、今日は天津でコンサートをして滞在する予定でしたが、延期になったために一日早く上海入りし、今日だけはウォルドルフ・アストリアに泊まることにしました。

4か月前に初めて泊まって以来ですが、スタッフの多くは私の顔と名前を覚えていて、誰かと会う度に「welcome back! Mr. Kanda」と声を掛けてくれます。

まだ一部の施設が正式にオープンしていませんが、前回に比べると館内に活気が感じられ、上海の新しいラグジュアリースポットとして注目を浴びていることが伺えます。

前回は歴史的な建物にある部屋に泊まりましたが、今日は新しく建ったタワーを選びました。ほとんど満室だそうですが、エクスクルーシブな雰囲気はまったく損なわれていません。

タワー川側高層階の客室からは外灘や浦東の景色を一望できます。最も上海らしい景観を好きなだけ満喫できるのは実に魅力的です。

部屋で夕方まで過ごした後、ツァオ・レイと落ち合って、新天地で夕食を共にしながら、渋谷や小樽のコンサートについて詰めの相談をしました。

半年ほど会わなかっただけですが、急に大人っぽくなっているツァオ・レイにびっくり。まるで少年だと思っていたのに、見違えました。演奏の味わいも一段と深まっているのかもしれません。

料理の味は上海の方が一枚上手に感じます。でも、物価は上海の方が格段に高いので、美味しくて当たり前という見方もできます。たった2日でしたが北京プライスに慣れてしまったので、上海ではすべてが高く思えてしまいます。

デザートは魚型のマンゴプリン。思いっきり着色してあるようですし、味もかなり人工的ですが、遊び心があって気に入っています。

夕食から戻ると客室の窓からは見事な夜景が。

昨日の宿とはまさに天と地。今夜はゆっくりとバスタブに浸かれるという幸福を味わいながら、素晴らしいベッドで眠り、疲れのすべてを吹き飛ばすと同時に、体調不良をリセットしようと思います。