コンサートを創り出す人たち

3月に入り、私の周囲はにわかに活気づいています。春を待ちわびた蜂たちのように、さまざまなプロジェクトが動き出しました。秋が連日連夜のコンサートシーズンになるのに対し、春はイマジネーションの季節です。

コンサートそのものは、その時、その場限り、たった数時間のできごとですが、ひとつの本番を迎えるためには、実にさまざまな準備が必要です。

その発端となるのが、「コンサートを実行しよう」という動機です。

コンサートの多くはプロの手によって企画され、プロが準備を整えて当日を迎えるというパターン。企画もプロモーションも集客も、何もかもプロが行うので、ステージでの演奏以外はすべて「お任せ」です。

エレクトーンのコンサートは、そのほとんどを製造元であるヤマハの関係が主催していますが、私が出演するコンサートでヤマハが関与しているものは、極めて稀です。

まだ一般に馴染みが薄く、集客面でもリスクの高いエレクトーンコンサートを、「ヤマハ外」の方々に主催してもらえるようになるには、長い道のりと苦労がありました。

クラシックコンサート事業そのものが低迷している現在でも、こうしてコンスタントにステージを踏ませてもらっているのは、本当に奇跡のようなことだと、心から光栄に思っています。

そして今、私が最もありがたいと感じているのは、プロ以外のコンサート主催者たちに対してです。

それが仕事ではないにもかかわらず、「この音楽を多くの人に聞いてもらいたい」との強い思いから、私が演奏するための機会を整えてくれる人が、年々増えています。

その人たちは、大抵、コンサート事業に関しては右も左もわかりません。リスクも知りませんし、煩雑な準備も理解していません。でも「思い」だけは誰よりも強いのです。

そんな付け焼刃の状態で主催をして、とんでもない失敗に終わったら一大事。場合によっては大赤字になりますし、想像以上に煩雑な準備に追われ、「こんなはずじゃなかった」と後悔するおそれも少なからずあります。

せっかく「熱い思い」を持ってくれているのに、夢で終わってしまうのはなんとも寂しいものです。かといって、失敗をさせてしまっては、寂しいどころでは済みません。

そこで、コンサートを成功へ導くサポートを含め、夢をカタチにする努力を一緒にすることにして、それぞれのニーズに合わせた規模のコンサートを、これまでにも多数実現させてきました。

私のモットーは、やるからには全員がハッピーになるということです。準備段階は楽ではありませんが、当日のお客様が見せてくれる表情に触れれば、苦労も吹き飛びます。関わった人たちは、この瞬間の快感に病みつきになるのです。

ここのところ、コンサートをやりたいとのラブコールが、国内のみならず世界各地より寄せられています。実現には丁寧な計画と準備が必要ですが、それらはいずれ実現するでしょう。

そこには必ず新しい出会いがあります。神田将との出会い。エレクトーンとの出会い。

それだけではありません。何もないところからひとつのステージを作り上げる計り知れない情熱とパワーがみなぎる空気との出会い。私の音楽は、こうした「思い」たちに彩られ、心地よい会場に響き渡っていくのです。