一発録りの名人

楽しかった昨日のランチとは対照的に、今日の食事はひとりきりで簡単に済ませました。これから数日は仕込みのオンパレード。消耗戦に突入した今となっては、食事も作業の一環のようなものです。

まず仕上げなければならないものは、IDC用の演奏収録。IDCって何?と不思議に思う方がほとんどでしょうね。私もです。大塚家具ではありません。インターネットダイレクトコネクションの略だそうです。

STAGEAが登場した時、ちょっとした話題になったのが、インターネットに接続できるという機能。これはワールドビジネスサテライトでも放映されました。

楽器を操作するための液晶パネルには、ブラウザとしての機能もあり、インターネットに接続することによって、さまざまなサービスを受けることができます。

エレクトーン用のデータをダウンロードするというのが一番頻度の高い利用法ですが、密かに人気があるのが「ライブハウス」というコンテンツです。

「自宅のエレクトーンを演奏家がネット経由で演奏する」と表現してもイメージしにくいかもしれませんが、録音した「音」が流れてくるのではなく、あくまでそのエレクトーンを「演奏」させるところがポイントです。

なので、演奏再生中にエレクトーンのパネルを操作して音色を変えれば、その設定に従って発音します。その場に演奏家がいるわけではありませんので、厳密には「生演奏」とは違いますが、CDを聞くのに比べると遥かにリアルな印象です。

私は以前にも一度参加し、その際は「オペラ」をテーマに選曲しました。今回、ふたたび参加できることになり、「ウルトラ・モダン・クラシック」をテーマに3曲をアップロードします。

そのための演奏を今日中に収録したいと思い、楽器に向かいました。都合4曲の収録が必要なのですが、とりあえず1曲ずつ弾いて、1回目からデータ記録状態にしておきました。

結果的には、4曲とも1回目の演奏でOKでした。完ぺきな演奏かどうかと言えば微妙なところですが、今日の気分とコンディションの中では、上出来だと思います。

何度も繰り返し弾けばもっとよくなるかと言うと、必ずしもそうではありません。これまで何年も弾き続けてきた曲を、ここで数時間弾いたところで、劇的に変化することは期待できないのです。

それよりは、新鮮な緊張感の中で弾いた1回目のものが最も冴えた演奏になり、その後何度か弾いたものと比較して心地よく聞こえます。もちろん、ミスがあれば弾きなおさなければなりませんが、慣れた曲ですからミスの心配はありませんでした。

収録の緊張感は、演奏会でのライブ演奏のものとはまったく異なります。ステージで最も大切なのは、その場、その時ならではの演奏です。収録とは違い、1度限りのものであり、その場に居合わせた人とだけ分かち合える奇跡の音楽です。

一方、収録は繰り返し聞くことを前提としており、そのほとんどは「本人不在」の環境で再生されます。

正直、私は収録は「得意」ではあっても、好きではありません。ノーミスの行儀のよい演奏よりも、体当たりのライブの方が俄然爽快ですし、思い入れの質がまったく違います。

また、スタジオや自宅では、どんなに思いを込めたとしても、そこにお客様がいないわけですから、どうあがいてもコンサートのような演奏はできないのです。

それでも、精一杯、演奏会のつもりで収録した4曲。ご自宅のSTAGEAでお楽しみいただけるのは、4月からの予定です。詳しくはまた改めてご紹介します。