今年のテーマは「クオリティ」

一月が暮れていく。見上げた空には、ところどころ低い雲が垂れこめていました。日差しや温もりが恋しい季節です。

今日は終日デスクワークデー。月末だからというわけではありませんが、こうした作業は音楽とは完全に切り離さないと、精神衛生上、何かと不都合が生じますので、まとめて一気に片付けることにしています。

日中は外出できず、こんな駄菓子みたいなものを眺めながら、バーチャル食事を終了。これらはおやつではなく、ランニングの時のお伴です。

作業の中心は2011年のスケジュール調整。昨年、一昨年と、秋に集中したコンサートで、耐久レースのような状態に苦しみましたので、少しでもゆとりのあるスケジュールと、合理的かつ快適な移動手段の確保が課題です。

例えば、とある日に北海道で公演があるとしましょう。翌日が空き日で、そのまた翌日に北海道の別の地域で公演があるといった場合、空き日を移動に当て、休息を取るのが理想的です。

仮に空き日に演奏依頼が入るとします。場所は首都圏。物理的には可能なので、お引受けしてしまう。これが私の現実です。

断らないのは、仕事にどん欲だからではありません。せっかく私の演奏を必要として下さる方がいて、私さえその気になりさえすれば実現可能ならば、そのご要望にお応えしたいという気持ちが強くなるからです。

依頼を受ける時点では、気合いで乗り切れるだろうと判断するわけですが、そのような綱渡りスケジュールがいくつも重なると、かなり危なっかしい状態になってしまいます。

もちろん、そうした状況であっても、コンサートに支障をきたすようなことはありませんが、ゆとりがあれば、その分もっと冴えた演奏をお届けできるだろうにと、悔やむことは少なくありませんでした。

可能な限り数多くのステージに立つこと、すなわち、できるだけ多くの皆さまにエレクトーンを知っていただくことが、私にとってこれまでの最優先事項でした。

でも、今年からは一度ごとの演奏クオリティを重視すると、昨年初頭より決意していました。今はそのためのスケジュール調整に取り組んでいるところです。

実際、今年になってからの私の演奏は、これまでとはまた一味違うと感じていただいています。一口でいえば、ゆとりがもたらしてくれた安定感でしょうか。

今の年代だからこそ演奏したい曲にも新たに取り組むと同時に、長い間弾き続けてきた曲についても、一層の磨きをかけ、より説得力のある演奏を目指します。

これまで私が選んで来た曲は、いずれも一生のレパートリーとして相応しい、珠玉の作品ばかりです。それらの価値を高め、より深く聞き手の胸に染みる演奏をお届けし続けます。

酒宴の席でも、大統領や国王の前でも、また、由緒ある劇場でも、真夏の体育館でも、変わらぬ思いと情熱でのぞみます。