一度限りの演奏に向けて

音楽的な創作活動と、企画などの事務的作業。どちらもデスクワークではありますが、それぞれに使う頭の領域が異なるため、これらを同時進行することは困難を極めます。

理想的なのは、創作と事務で取り組む時期を分け、それぞれに集中できる環境を作ること。さらに、演奏会が多い時は、演奏だけにフォーカスできれば言う事ありません。
ところが、忙しい時はこれらすべてが重なり、正気を保つのが精いっぱいという状況に。今がまさにそんな日々です。

なんとか頭を切り替えられないかと、毎度悩み続けていますが、よい解決策は浮かびません。

日替わりで創作と事務を交互に進めるのも無理。せめて週単位できっぱりと線を引きたいところですが、結局は「演奏・創作・事務」のミックスシェイク状態です。

ところで、これらの中で一番優先順位が高いのはどれだと思いますか?

演奏家ですから「演奏」と言いたいところですが、実は演奏は最下位です。「創作」は、私さえ必死でエンジンふかせば何とかなると思われているので、結局2番手。というわけで、いつも最優先になるのは事務作業なのです。

もちろん、気持ちの中では演奏が最重要なのですが、なかなかそうはなりません。

今日も、来年の演奏会のプログラムを考えたり、来年のコンサート企画を提出したりと、頭の中はすっかり2011年です。ある意味、時期の先取り感は、ファッションなどのモード業界と近いものがあるかもしれません。

とにかく「弾きたい!」と思いながらの、「創作したい!」と思いながらの事務作業です。

それが「弾かなきゃ!」「創らなきゃ!」という危機的状況になることもしばしば。

何かに向けて、じっくりと時間を割いて思う存分取り組むなんて、コンクールに出る学生だけに許される贅沢。

彼らが1年に1曲を仕上げる間に、私たちは100曲以上を扱います。たった一度しか演奏しない作品のためにも、惜しみなく魂を注ぎ、たった一回だからこそ、悔いのない演奏をしたい。

今日はやっと、大至急扱いの事務作業が一段着いたので、これから「一度限り」であろうと思われる曲たちに、すべてを注ぎます。