神田将エレクトーンスペシャル in 名古屋

私にとって、エレクトーンにとって、次のフィールドへと歩みを進めるに値いするのかどうかが試される機会がやってきました。

エレクトーンを愛する人たちの血が混ざっていないふつうのコンサートで、エレクトーンが極めて重要な役割を果たす今回の公演に際して、私はすべての力を注いで取り組んで来ましたが、その成果は実を結ぶのでしょうか。

企画倒れになる危険性も十分にある中、今回の公演にGOサインを出してくれたプロデューサーや主催者に、恥をかかせることだけは絶対に避けたい。今朝はそんな気持ちでいっぱいでした。

早い時間に朝食を済ませ、余裕を見てホテルを出発しましたが、わずか数分で会場へと到着。公営のホールだと、既定の時間にならないと入れてもらえないことが多いのですが、中京大学の運営になった今では、とても愛想のいい係が、快く楽屋まで案内してくれました。

ホールにはまだホールのスタッフしかいませんが、すでに音響反射板の設置操作を始めてくれていました。

ほどなくプロデューサーと主催者が到着。おおまかな流れを確認してから、具体的なステージ作りを始めました。

そこに続々と出演者も到着し、舞台はだんだんと賑やかに。ピアノは調律が進められ、サクソフォンもリード選びや、鳴り具合の確認など、リハーサル前にすべきことがたくさんありますが、エレクトーンは位置を決めてスイッチを入れれば準備完了。


やはり一番複雑なのはパーカッション。ドラムセットとティンパニなどのシンフォニーアイテムをドッキングさせたマルチステーションが仕上がりました。

12時からはいきなりランスルーです。第1曲目は「フィガロの結婚」序曲。ウォーミングアップもなしに、軽快でスピード感溢れる曲を演奏するのはなかなかリスキーですが、最初にこれを乗り越えてしまえば、あとは自然と波に乗れます。

段取り的に一番複雑なのは、好田さんの指揮者パフォーマンスコーナー。カラヤンやチェリビダッケ、レヴァインなどの振り真似とともに、それぞれの個性が反映された音楽性でもって演奏をします。

その遊び心いっぱい、かつ、真面目な演奏をするというさじ加減がちょっと難しいかもしれません。また、客席が空っぽの状態で笑いやリラックス感を想像しながら進めるのですが、笑いに対しては素人の演奏家たちには、なかなかつかみにくいものです。

第1部のランスルーが終わった時点で、全員どっぷりと疲労。15分の休憩をとり、その間に主催者が用意してくれた釜めしをいただきました。本格的に炊きあげられた釜めしを楽屋でいただけるなんて幸せ。幾つかの種類があり、吸物や惣菜まで用意されていました。

第2部はエレクトーンソロからスタート。しかし、どうもエレクトーンの音がしっくりと響きません。明らかにパワー不足という感じです。特にティンパニーが入る曲は、まったく歯が立たちません。

私の希望では、エレクトーンにはKA-75などの大型スピーカーを使いたかったのですが、名古屋地域には備品がないとのこと。

かといって、エレクトーンの音だけのためにPAチームを導入することは、予算的にプロデューサーが許しません。

エレクトーンは機械なので、どんなに凝った準備をしても、どんなに稽古を重ねても、スピーカーがよくなければ、すべてが台無しになるというのが宿命。

重厚感や繊細さを表現でき、迫力があるのにうるさくない音を出せるだけのシステムが必要なのですが、今回はその用意はできませんでした。

でも、ホールの音響担当者は、リハーサル中にも様々な工夫を重ね、スピーカーを増設したり、プロセニアムスピーカーを併用したりして、少しでも理想の音に近づけられるようにと、とことん協力してくれました。

次第に全体の音も馴染むようになり、本番に向けての不安はみるみる少なくなっていきました。

夕食は中華どんぶり。これも出来立ての熱々が用意されました。とても美味しそうでしたが、私は本番前にすることが多く、結局口にできませんでした。

5分押しでスタートした本番。出演者のテンションも上がって、颯爽とステージに向かいました。1曲が終わって、お客様の大きな喝采を感じた時、今日はとことん燃えて弾こうという特別なスイッチが入りました。

曲が進み、好田さんのパフォーマンスコーナー。お客様の付き合いのよさには、本当に脱帽。好田さん自身が、お客様に圧倒されビビっていたほどのノリのよさでした。

ブラボーも随所に飛び出し、演奏者はみなゴキゲンです。第2部はよりスタイリッシュな雰囲気でスタート。ソロ、歌とのデュオが終わり、波多江さんが客席から登場して巡回すると、客席からはどよめきが。

そしていつもはソロで演奏している「さくら」も、今日は石川さんのドラムスとのセッションです。そして映画音楽をメドレー仕立てにしたアンサンブルがあって、終曲は「ラプソディー・イン・ブルー」。はじけるようなアンサンブルに、お客様は総立ちで拍手を送って下さいました。

アンコールでも大変に盛り上がり、2時間を超えるコンサートながら、終えるのが惜しいような、とても気持ちのよいステージとなりました。

今日のコンサートで、出演者全員が大きな手応えを感じたはずです。初回でしたので、反省点をあげれば切りがありません。でも、このアンサンブルが持つ無限の可能性に、ちょっぴり自信もつきました。

エレクトーンの新しい時代を予感するコンサート。今夜のステージ実現に向け、大きな力で支えてくれた皆さんに、心より感謝します。