ライブハウスでシンフォニー

エレクトーンの聖地として愛好家に親しまれているALT_SPEAKERに最新モデルが入ったのを知り、急遽開催を決めたソロライブ。

こんな暑さでは誰も来てくれないかもしれないと思いつつ、まあ、それならそれで店長とのんびり喋って、だらだら弾いて遊んで帰ればいいと気楽に構えていたら、北から南から、あるいはご近所からと、各方面よりご参加くださいまして、賑やかな会になりました。

お詰め合わせいただければ、もう少しご案内できなくもありませんが、和気藹々としたライブハウスとはいえ、この暑さではせめてビジネスクラスくらいの個人空間は必要だろうと、ゆとりを持って締め切りました。

開店前の店内は冷房最強でひんやりとしていたものの、お客様がお集まりになるに連れ熱気を帯び、いかにもサマーライブという風情の中でスタート。私も久しぶりに汗びっしょりの熱演に気分も上々です。

演奏曲は「ユーレイズミーアップ」以外はクラシック。後半はまあまあ大きな作品を選び、途中に休憩を10分挟みましたが、トータル100分のステージを一気に駆け抜けました。

配信をご覧くださった方々を含め、エレクトーンを弾かれる方の比率が圧倒的に高かったので、ふだんよりも演奏への思い入れなどにまつわるお話を多く取り入れてみたりして。

思えば、ライブハウスでシンフォニーがシンフォニーとして演奏される機会というのは、滅多にないかもしれませんね。そもそもオーケストラは店に入り切りませんし、オーケストラさながらに弾ける楽器はエレクトーン以外に考えられませんので、おそらく実例はないか、あってもごく珍しいのは確かでしょう。

ライブハウスでジャズトリオを聴く感覚で、目の前から放たれるシンフォニーを味わう。機材が所狭しを置かれ、雑多な環境で聴くという体験もまた、偉大な作品に新しい横顔を生み出せたかもしれません。

アンコールには、お客様として客席に来てくれていたヴォーカリストのsatiさんを引っ張り出して、シューベルトのアヴェ・マリアを低く深みのある声で魅力的に歌ってもらいました。いい雰囲気でしたね。

その後は一度おひらきにしましたが、店内で余韻を楽しむ皆さまとの対話で、ライブの感想を共有していただいたり、若い子の演奏を聴かせてもらってちょっとアドバイスしたりと、コミュニケーションのひとときを過ごしました。

店を後にしてから、そういえば終わってから水も飲んでなかったと渇きを感じ、目と鼻の先にある古い喫茶店に吸い込まれました。

今なおタバコが喫える昭和な店内には、ドヴォルザークの「新世界から」が流れています。レコードなのでしょうか。優しくふくよかな響きが感じられ、なんとも心地がいい。おそらく棒はカラヤン、楽団はベルリンでしょうか。

「ああ、カラヤン先生、私も今しがた同じ作品を弾いて来ました。こんな風には弾けませんでしたけど、ちょっとは共通点を感じたりしてなんだか嬉しいです。図々しいですかね?」などと心で独り言を。

アイスコーヒーに手作りチーズケーキを添えて、シンフォニーを聴いてキャッシュで700円。昭和は優しい時代だったなと、しみじみ思いつつ帰途につきました。

写真:上田海斗

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