コウノトリのふるさと

初めて訪れた豊岡での「姜建華と仲間たち」コンサートを終えて、帰京しました。1泊の旅でしたが、とても長い時間が経過したような不思議な感覚です。夜が明ける前に出発し、飛行機と車を乗り継ぎ、途中、道を誤ってケモノと出くわしそうな山を抜け、やっとたどり着いた会場には、独特の静けさが満ちていて、何か古い映画の中に迷い込んだかのようでした。

その不思議な気分の中、着々と準備が進み、滞りなくリハーサルが済んで、何の不安もなく演奏会が終わるという、まるで台本通りの営みが、いつになく穏やかな脈動を導き、どこかぼんやりとした記憶を刻んだのかもしれません。決して余裕があったわけではないのですが、何もかもがピッタリと枠にはまり、過不足がなかったというところでしょうか。

演奏会本番は、たいへん気分のいいものでした。初共演のおふたりと交わす、敬意に満ちた音楽の対話。そして、かつて全国を巡るお供をさせていただいた二胡の世界的名手が放つ火花のような音楽には、懐かしい思い出を呼び起こされました。舞台袖で菊池玲那が撮った写真にも、ステージのエネルギーがよく現れていると思います。

また、今回は同行したスタッフたちにとりわけ大きな感謝を捧げます。ステージで喝采を浴びるのは常に出演者ではありますが、もしその喝采をカタチあるものに置き換えることができるならば、少なくともその半分はスタッフに捧げたいと思うのであります。

最高のパフォーマンスを引き出すために尽力するスタッフの姿は、私たち演者の目には無敵のヒーローとして映り、彼ら無くしてステージは成立しないことを、今回もまた強く実感する機会となりました。

最近、人の苦労や犠牲の上で自分が輝いていることに、なんとも言えないモヤモヤしたものを感じておりますが、それらすべてを背負いながら、与えられたチャンスに感謝し、人前で演奏する責任を果たしてまいります。