リビングルーム

14日のALT_SPEAKER昼夜2回ライブ、昼のSATI LIVE INNER LIGHTは、植物の力を秘めたエッセンシャルオイルの香りに身を委ねるような、時と時のしじまを進む列車のような白昼夢を見せてくれました。

夜の便は18時30分発。それまでの間、店はアイドルタイム。実はここでの雑談がとても有益で、店長や映像エンジニア、そして出番を終えたSATIさん、種村敬子、弊社スタッフとの気の置けない会話が、チーム感を一層高めてくれます。

実は私は腕のコンディションがよくないため、リハーサルをしない構えでいました。すでに何度か経験しているプログラムなので、集中力さえ維持できれば演奏に支障はないと判断したからです。

軽くサウンドチェックをとのつもりが、いろいろ欲が出てきて、店長を捕まえて、ああしたいこうしたいと無数のリクエストをぶつけたところ、嫌がらずに熱心に調整してくれ、ライブハウスにしてクラシック音楽に対応できる音場が完成したのです。

ディテールが表現可能になると、演奏へのストレスが消えるのが本当にありがたい。本番への意欲が一気に増しました。

ただ、なんとも情けないのは、この日もお客様が少なかったこと。先日過去最低記録を樹立したばかりで、早くも記録塗り替え!なんと13名様での公演となりました。

単なる主催公演ならまだしも、今回これでは店に迷惑を掛けてしまいます。せめて高い酒でもガンガン飲んで売り上げ落として帰らなければと思っても、酒気帯び演奏は処罰ものですから出来ません。

なんだか肩身が狭い。もう弾く価値も存在価値もないってことか。消えろってことだろうな。そんな思いに心を支配されつつも、これが最後になろうともプロとしてここはしっかりしようと努めました。

ところが、お客様がひとりひとりとお越しになり、わずかながらも会話するうちに、私はこんなにも期待され、愛されているということに気付かされました。

誰もストレートには口にしませんが、ものすごく強く支えられてるという実感が押し寄せてきたのです。18時30分発の列車にご乗車の皆さまとともに旅した大作曲家の足跡を辿る道は、とても温かく美しかった。

腕の調子が影響した部分もありましたが、公演キャンセルの危機を振り切って実施して本当によかった。北千住がサロンなら、ALTは私のリビングルーム。またの機会にはぜひくつろぎに来てください。

この日、朝は西武新宿線が、夜は小田急線が運転見合わせとなり、雨天もあって出掛けるのがたいへんな一日でした。影響を受けたお客様もいらしたと思います。にもかかわらずお付き合いくださいまして、ありがとうございました。

私はスタッフと別れて、帰宅前に一人打ち上げを。といっても、コメダコーヒーのなんだかデニッシュみたいなのにソフトクリームが乗ってるやつを食べただけですけどね。たぶん神田のことだから、豪勢にやってんだろうとお思いかもしれませんが、ほんとうの私は質素で、かつ孤独なのです。

写真:上田海斗