飛び立つ前の晩

演奏会前夜。とてもささやかな集まりなのですが、演奏会に臨む空気というのは、規模や趣旨と関わりなく、常に一定の覚悟を求められるものです。

大袈裟に聞こえるでしょうけれど、「いよいよ時が来た」という感じの、あとを運命に身を委ねる「覚悟」を決める瞬間が訪れると、腹が座ってすべてがそれまでと違って見えるようになります。

弾くだけ弾いて、やれる準備をとことん整えても、何もかもうまくいくことなど、演奏会に限ってはあり得ません。だからと言って、焦ってギリギリまで詰めたら、結局余裕もなければ味わいもない形だけの演奏になってしまいます。

ここまでやったら、あとは集中力と平常心。そういうポイントを見極め、楽譜をそっと閉じて立ち上がるタイミングを見誤らないことも、演奏家の大切な資質だと思います。

楽器から離れたら、本番で身につける衣類を手入れし、靴を磨き、持ち物を整える。タキシードにアイロンを当てながら、きっと宇宙飛行士も飛び立つ前の晩は、同じ気分で、同じように旅の準備をしているのかも、などと思いを馳せてみたりして。

昨日のリハーサルでは、玉村さんと出会いの時が話題に上がりました。最初に共演したのはいつだっけ?もう20年以上になりますよね。もっとじゃない?あの頃は若かった。などなど。

実際に調べてみると、初共演は2007年2月でした。つまり今は18年と11ヶ月。長いような、あっという間のような。玉村さんをはじめ、長くお付き合いしてくださる音楽家が多くいるのは、とても嬉しいこと。明日はどんな景色が広がるのでしょう。楽しみです。