選曲の難しさ

現在、今秋以降の演奏会プログラムを考案しています。本来はもっと早い機会に考えるべきことなのですが、クラシック音楽にも「旬」と「流行」があり、その流れの一歩先をとらえようとすると、どうしてもギリギリになってしまいます。

最近、私が弾きたい曲と、プロデューサーから求められるプログラムに、溝を感じるようになりました。求められている意図はよく理解できるので、それを踏まえて提案しているのですが、なかなか合意に至りません。

「誰もが知っているクラシックを」とリクエストされ、「誰も寝てはならぬ」や「胡桃割り人形」を提案しても、「難解だ」と言われてしまいますし、ビートルズやプレスリーを入れてくれというを求められたりもします。

要望にはできる限り応えたいと思っているのですが、それで本当にお客様は満足して下さるのか、私には疑問なのです。

私のコンサートにお出かけ下さる方々は何を期待しているのか、どうしたら皆さんに満足して頂けるのか、それにお応えするのは大変重要なことです。

一方で、「こんな音楽もあったのか」「想像もしなかった世界だった」といった新鮮さをお届けするのも、私のコンサートには欠かせない要素だと思っています。

かといって、けれんばかりの風変わりな演奏会は私は好みません。王道ではないかもしれませんが、音楽の基本に忠実に、丁寧な演奏を心がけたいというのがまず第一です。

そして音楽が導く様々な感情にしみじみと浸って頂き、豊かな経験をしたと感じて頂けるようなステージにしたいと考えています。

リサイタルの準備も着々と進めていますが、やっと曲の候補が出そろい、これから編曲と取捨選択をしていきます。ひとつひとつはいい曲でも、流れにそぐわないとか、カラーが似過ぎるとか、思ったほど演奏効果が上がらないとか、理由はさまざまですが、弾きたいと思った曲の半分はお蔵入りになります。

そんな「選曲の妙」は、こうした厳しい要求によって磨かれるのですが、いささか「どうしたらいいの?」的な迷いが強まってしまいました。

心の声に従うか、求められるままに流れるか。難しいところです。