ALICE IN TAKAMATSU

昨晩は、いささか乱暴な飲み方をした薬の劇的な効果と副作用により、日付が変わる前に、気を失うようにして深い眠りに就きました。
(よいこの皆さんは決してマネをしないでネ。)

その代わり、夜明け前に目覚めた時は、すっかり生まれ変わったようないい気分。さながら、さなぎから蝶になったようでした。

もう体調をいたわる余裕はありませんので、そのまま作業に没頭し、午前中で予定のところまでを終えました。

そこに、4月29日のコンサートを世話してくれている方が、新鮮なフルーツを届けてくれたので、気分もよかったことですし、眺めのいいレストランでランチをともにすることにしました。

最初は消化のいい讃岐うどんをと思っていましたが、生まれ変わって最初の午餐ですから、もう少し奮発して、高松シンボルタワーの高層階にある「ALICE IN TAKAMATSU」に向かうことにしました。

四国で最も高層に位置するレストランは3つ。
石鍋さん、陳さん、中村さんによる、それぞれフレンチ、四川、創作和食の有名店が集結した堂々たるスペシャリティレストランフロアなのですが、そこに向かうエレベータがオフィス仕様の味気ない内装で、すでに興ざめです。

「ALICE IN TAKAMATSU」のエントランスを入ると、若い女性スタッフが出迎えましたが、笑顔も歓迎も寄せられないまま、予約の有無を尋ねられました。予約なしであることを告げると、席の準備の間、喫茶用のコーナーでしばらく待つようにと、席を勧められました。

やがて案内されたダイニングホールは、入口から続くバージンホワイトでまとめられ、極めてシンプルなインテリア。三方を窓に囲まれた高層階からの見事な眺めが、まるで海に浮かんでいるような気分にさせるので、余計な装飾は必要ないかもしれません。

テーブルには清潔な白いクロスが掛かり、ゴールドで縁どりされた飾り皿と鳥型に折られたナプキンが華やぎを醸しています。

若い給仕は、私に先にメニューを差しだそうとするので、まず女性にお渡しするよううながす必要がありました。このことからも、サービスの洗練度は十分に予見されます。

見回すと5名の給仕がいましたが、若い人ばかりで、要になるような熟練した雰囲気を持っている人はいません。

昼のコースは3種類。1,500円、3,000円、4,500円と2倍、3倍に跳ね上がります。
1,500円のは、気軽に楽しむ内容であって、おもてなしには論外。
3,000円のは肉か魚をチョイスで、4,500円のは魚、肉両方のコースですが、食材や調理方法を見比べると、圧倒的に4,500円の方が質の点で魅力的でした。

5品のコース内容と、実際に運ばれてきた皿の出来栄えを照らし合わせても、料金分の価値は感じられましたが、料理の温度に関しては不満が感じられ、今回は必ずしもベストな状態で提供されているものではないという印象が残りました。

厨房内の連携がうまくいっていないのか、あるいはそもそも人員が不足していて、本来手分けして調理されるべきものを、ひとりで順を追って仕上げているのか、いずれにしてもこれでは優れたレシピと素材が十分には生きてきません。

今回は魚と肉は30度に満たないぬるさで、付け合わせにいたっては完全に冷え切っていました。
もしベストの状態で提供されれば、瀬戸内のスズキやシャランの鴨は、一層素晴らしい味わいになったはずです。

また、料理に彩りを添え、居心地の良さを左右するサービスにも、一層の洗練が必要だと感じました。ただ、すべきことをするだけでは、高級レストランの仲間入りはできません。

私のテーブルには今度高校生になる女の子が含まれていましたが、デザートの一部にソーテルヌワインがふんだんに使われており、その風味とアルコール感が強く残ることを断わってはくれなかったのに、デザートを運んで来た時は、ソーテルヌとはなんぞやと、不要な説明を繰り広げていました。
名店ならば、こういった場合どのように対応するのか、見習ってほしいと思います。

そして、話に興じてると、「閉店なので」と追い出される始末。とうに閉店時間を過ぎているのかと思いきや、まだジャストです。これも一流店、二流店ではやらないことです。追い出すにしても、それにふさわしい態度があるのではないでしょうか。

でも、同じクイーンアリスでも、宮崎のシーガイアのよりは総じて満足でした。
宮崎はとにかく高い。その点、こちらはリーズナブルに感じました。