価値ある時間の創造〜仙台国際ホテル(3/19)

仙台国際ホテルが総力をあげて臨んだ催しから十日、改めて仙台での時間を振り返ってみます。

ホテルディナーショーといえば、大きなバンケットホールでありきたりの宴会料理と飲み物が出され、お目当てのアーティストによるショーを楽しむのがひとつの典型です。参加料金は押し並べて高額な傾向があり、料理や飲み物に値頃感を見出すのは難しく、まあ推しのパフォーマンスを間近で堪能できたからいいやということも多いのではないでしょうか。

ところが今回の催しは、ディナーショーのイメージを大きく覆すのに余りある工夫が随所に見られ、お見逸れいたしましたと舌を巻かざるを得ない体験になりました。

仙台は立派な都市ではありますが、東京でも4万円に迫る料金設定になれば、ほほうと唸らずにいられませんので、まず人が集まるのかと心配に。ところがあっという間に満席になり、仰天しました。

そして迎えた当日。実際にすべてを目の当たりにし、そういうことだったのかと納得できたのです。

料理も飲み物も何ヶ月も前から準備をし、仕込みや試作、サービスの練習を何度も重ね、食事そのものがエンターテインメント級のパフォーマンスに仕上がっていました。その日は全館のレストランを休業し、すべての人員をディナーショーに注いだというから驚きです。

これほどまでにチームワークが固いのは、総支配人で社長の野口さんによるリーダーシップあればこそ。ファンも多ければきっと敵も多いに違いありませんが、信念を持って我が道を行く姿に勢いと未来を感じずにはいられません。

料理人もサービス担当も、皆が心底楽しんでいるという雰囲気でした。お客様に美味しいものを召し上がっていただきたい、ここで過ごす時間が精一杯心地よいものになるようおもてなししたい。そんな思いが喜びとともに溢れ、まるで初めてのディズニーリゾートのような高揚感を生み出します。

それを受け止めるお客様がまた素晴らしく、過ごし方と楽しみ方を心得ていらっしゃるのがよくわかりました。つまり、この日のボールルームは仙台の社交場そのものだったわけです。華のある人々が集う様子は、「ガラ」という言葉がピッタリでした。

その雰囲気に気をよくした私は、食事中の音楽を弾きたくなり、会場BGMを止めてもらい生演奏に切り替えました。きっと誰も気づかないだろうと思っていたのですが、次々とお客様が話しかけに来てくださり、弾いていた私の方がびっくり。急遽のことで照明もなく、暗譜で弾ける曲のみでしたが、20曲ほどをお届けし、タイタニックの楽団のような気分を楽しみました。

サイさんの歌のお伴は、我ながら阿吽の呼吸でおおくりできたと思います。気品のある音楽と振る舞いにはいつもハッとさせられますが、今回も多くを学ぶことができました。主演のパフォーマンスを最大限に引き出せるよう、一層の柔軟性を備える努力をしたいと、新たな目標も見つかりましたし、サイさんとかつてないほどに親しく過ごした時間は、私の新しい宝物になりました。何から何までプライスレス。音楽と美食、そして何といっても心意気。価値ある時間の創造こそが催しの真髄だと確信する一夜でした。