今年のリサイタルがなんとか終わりまして、恒例の放心状態にありつつも、余韻が冷めないうちにご報告したいのですが、まずは先の名古屋公演から振り返ってまいります。
北千住の地下スタジオでスタートしたサロンコンサート「音楽のたのしみ」の初スピンオフとなる名古屋公演は、たくさんのドラマを含み、ひときわ思い出深い催しとなりました。
主催を買って出てくださったのは、響尾美千江先生。とにかく名古屋に神田将の音楽をとの一心で、ほとんどすべての準備をおひとりでなさいました。こうした企画にとりわけ慣れていらっしゃるわけでもなく、むしろ経験がさほどなく手探りだからこその大胆さが、成功につながったのかもしれません。
これに似た状況がデジャブのように浮かびまして、思い起こしてみたら、それは周南の第九でした。引退した高校教師が何としても第九をやりたいとの熱意でやり遂げた、門司宏子先生の「奇跡の第九」。あれは本当に感動的でしたが、今回も同様に熱意の勝利でした。
響尾先生の計らいは、いつも慈愛に満ちていて、すべてのことから心を感じます。例えば楽屋に置かれるカップやお弁当にも思いが溢れていて、それらひとつひとつに触れる度に、よい演奏をしたいと奮い立たせてくれます。
会場に選んだのは、たいへん質の高い室内楽公演を定期的に開催している「ルンデ」。このクラシックの殿堂でエレクトーン演奏をさせてもらえるのですから、なんとも光栄なことです。
ただ、こうしたハイクラスの演奏会会場というのは、どこか崇高で硬い雰囲気も付きまとうもの。私もリハーサル開始までは少々身構えるところがありましたが、いつしか優しく心地よい雰囲気に変わって、これも響尾先生が振りまく心意気の伝播なんだろうなと感じました。
そんな環境ですから、たいへんリラックスしてよい演奏をすることができました。ぜひまたこの会場で弾く機会を得られたらと思います。
そして、演奏会の後には、響尾先生の護摩に随喜させていただきました。そう、音楽の先生であるだけでなく、行者としても全国で活躍しているというユニークなプロフィールをお持ちの響尾先生。
護摩の時は、レッスン時の優しいお顔が、真剣な表情へと一変し、祈りの言葉や手順にぐいぐいと引き込まれました。目の前で高々と上がる炎は、龍のようであったり、剣のようであったり、刻々と姿を変えます。熱いというより体の芯に染み入る感じ。ありがたい体験でした。
健康とリサイタル成功を祈願いただき、無敵となった私。名古屋は尾張といいますが、終わりはありません。







ステージ写真:響尾美千江
