真夏のVIVA!音楽祭

いよいよ「真夏のVIVA!音楽祭」当日。この日のためにすべてを注いで来た主宰の佐藤母娘と惜しみない協力をした家族の皆さんが、どんな思いでこの朝を迎えたのかを想像すると、とにかくそれにきちんと応えて成果を出したいという気持ちで満たされました。

前日のリハーサルで、ステージの出来栄えは納得できる仕上がりです。ソリストの圧倒的な歌唱は想像を超えた域にあり、合唱団の食らい付き様もそれに負けていません。しかし、ここで大きな心配の種が。

付近に線状降水帯が生じ、警報が鳴り響く中でのゲネプロとなり、本番の開催可否にも暗雲が垂れ込んで来たのです。ステージにまで響く豪雨と雷の轟に不安が広がりますが、行けるところまで行くしかありません。

ゲネプロは順調に済み、あとは開演を待つばかり。新幹線も在来線も止まった今、この会場へと来られるのは自動車だけとなりましたが、このような天候ながらも、多くのお客様が集まってくださり、定刻通りに開演しました。

第1部はヴェルディ「椿姫」のハイライト。ステージにはカウチソファひとつ、照明は3パターンというシンプルな演出しかありませんが、歌手による迫真の演唱により、オペラさながらの世界に。字幕はなんとテノールの澤原さんが作ってくれ、玲那が操作。歌の言葉が訳されたことで、トークによる解説がしやすく、聞き手の理解も進んだことと思います。

弾きながらステージを見つめ続ける中、歌手の表現力に改めて脱帽。見事なことはじゅうぶんわかっていたつもりでも、本番の魔力にはただただ圧倒されます。力強く華麗なだけでなく、極めて繊細な心情描写が醸され、何度も胸を射抜かれながらの演奏でした。

また、合唱団の存在感も素晴らしく、物語の世界観にすっかり溶け込みながら楽しんでいました。ダンスもいい感じの彩りに。効果的な振り付けをして、長らく練習に励んでくれたことを思うと、弾いているので拍手できないことがもどかしくて仕方ありません。華純さんの演出力、指導力、人としての魅力。これら無くしてはここまでにならなかったでしょう。

休憩を挟み、いよいよ真夏の第九。緞帳の中で板につきながら、合唱団ひとりひとりの顔を眺めました。それぞれに思いを持ち、私たちは今ここに集まっている。それだけでも素晴らしいことです。そして、ひとつの音楽を一緒に奏でることの喜びが、まもなく上がる幕への気持ちを高揚させてくれます。

動き出したらフィナーレまで一気に駆け抜ける第4楽章ですが、この日はまるですべての信号が青になった道を突き進むような爽快感です。ソリストの実力と合唱団の体当たりの心が重なり、大きなうねりを生み出しました。指導してきた華純さんのは、それを背中で受け止めながら自身のソロパートを見事に務めました。

アンコールでは、華純さんのに花を持たせようということで、華純さんの独唱にソリストがハーモニーを添える形でアンドリューロイドウェバーの「ピエイエズ」を。清らかな調べに、会場の心もひとつになった瞬間です。

こうして大成功に終わった真夏のVIVA!音楽祭。終演後のホワイエも熱気に包まれました。まだ雨が強く降り続け、主要道路にも冠水の情報が聞こえてきます。県外からお越しのお客様を含め、皆さまが無事にお帰りになれるよう祈りました。

そして、我々演者も名残惜しさをひしひしと感じながら会場を後に。帰京組のフライトは遅れに遅れたものの、何とか離陸。新幹線で来た玲那は足止めを食らいましたが、どう探しても宿が見つからない中、宇部音鑑の清水さんがネット売りしていない旅館を電話手配してくれ安堵。

こうして、実際の嵐の中で、音楽の旋風を巻き起こしつつ、真夏のVIVA!音楽祭は幕となりました。来年は宇部音鑑でのミュージカルに中井智彦さんを迎えて、そして再来年には真夏のVIVA!音楽祭が帰って来ます。宇部の輝きに引き続きご注目ください。

舞台写真:上田海斗