ピアソラ、ミュージカル、宝塚

霞町音楽堂での2日間3公演に際し、ご来場ならびにご声援賜わりました皆さまに、心より御礼申しあげます。

「舞台から響く奇跡のシンフォニー」と題したこちらの公演は、初共演となる枝並千花さん(ヴァイオリン)と音咲いつきさん(元宝ジェンヌ)とのコラボで、情熱的でドラマチックなひとときをお届けしました。

クラシックにミュージカルに宝塚歌劇ナンバーと、実にユニークな内容ながらも、軸のある選曲と構成により、違和感のないスムーズな展開になった当公演ですが、宣伝には苦労がありました。

まずもって、エレクトーンに馴染みのない方々に「面白そうだ」と感じていただくことの難しさを毎度痛感します。また、エレクトーンがどんな楽器であるにせよ、ヴァイオリニストや宝ジェンヌとのコラボがどのようになるのかをイメージするのはますます困難ですので、共演者おふたりにはご迷惑をお掛けしました。

しかし、当日はおおいに盛り上がりました。おそらく共演者ですら想像がつかなかったほどの親密で熱量を帯びたサウンドに熱狂し、ステージと客席が一緒になって同じドラマを体験することができました。

客席を埋めたのは、ほとんどが共演者のファンの方々でして、私にとってはアウェイもアウェイでしたが、そんなことは忘れて楽しめた3公演です。

初日は枝並千花さんとのデュオで、ピアソラとLes Misérablesをメインにしつつ、私の独奏でスペイン語圏とフランス語圏の香りをトッピング。とても情熱的で男前な音楽を奏でる千花さん相手なら、こちらも遠慮はいりません。火花が散るような演奏を間近に堪能できるのは、霞町音楽堂ならではです。

2日目は音咲いつきさんが加わり、3人で2公演。回によりお客様の雰囲気が大きく異ったのが面白いと思いました。ミュージカルナンバーは慣れていますが、宝塚歌劇の曲はすべて初挑戦の私。参考音源もないので、独自の解釈でまとめて弾きました。特に男役で歌う低い声が魅力的ないつきさん。宝塚ファンやいつきさんのファンの皆さまも喜んでくださってホッとしました。

今回の3公演に際しては、非常に体調の悪い中での準備となりました。仙台から戻り身動きが取れなくなったことで、事前のリハーサルが公演前日の1回のみとなり、共演者のおふたりにもご負担をお掛けしました。そんな状況でも、私の体調を気遣い、柔軟に対応くださったおふたりには深く感謝しています。一時は降板やむなしかと覚悟を決めたのですが、皆さまの励ましを受け、諦めずに向き合って本当によかったと思います。

また、会場に霞町音楽堂の皆さまにも大変お世話になりました。オーナーの山下様をはじめ、スタッフの方々が万全のサポートをしてくれたことが、とても大きな支えとなりました。

そして、霞町音楽堂のお客様は実に楽しみ上手でして、奏者の気分をおおいに盛り上げてくれます。音楽にほんとうの命を吹き込むのは弾き手ではなく聴き手だと改めて確信する2日間でした。

この後は24日にサンシャインシティプリンスホテルにて神田将マスカレードライブがあります。せっかく今井俊輔さんという最高のパートナーをお迎えしているにもかかわらず、私の力不足で空席の多い状況です。現実を見れば、もう退く潮時かとも思わずにはいられないのですが、もう少しやりたいことがあるので、ぜひ演奏家生命の維持にご協力ください。よろしくお願いします。

舞台写真:上田海斗