早春賦

今日は渋谷でのコンサート。もう1月も終わりというこの日に、私はやっと今年初めてのステージを迎えます。これほど演奏会から離れている期間が長いのは久しぶり。それだけになんだか遠足の朝のように気持ちがはしゃいでいます。

全16曲のボリュームあるプログラムには、数々の名曲が集まっています。書かれた年代やジャンルもさまざまで、さながら時空を超える旅のよう。そして日本の作品が多く含まれるのが、この演奏会の特徴のひとつです。

毎回必ず数曲の唱歌や童謡も演奏しますが、プロが歌う唱歌を聞く機会は、オペラアリアを聞くよりずっと少ないと思います。伴奏の際に心掛けているのは、シンプルさ。大げさなことは避け、聞き手が歌詞に集中できるようにします。

今回は3曲を中安さんが歌います。その中の1曲が早春賦。「春は名のみの風の寒さや」で始まる旋律は、誰もが耳にしたことがあるでしょう。この曲は外国でもよく知られています。

安曇野の雪解けを歌ったと言われていますが、私はこの曲を弾くと、なぜかとても悲しくなります。すでに失われた何かを懐かしむような、そんな気持ちになるのです。

それが私の経験によるものなのか、あるいは歌詞というより旋律によって引き起こされるものなのか、理由はわかりません。今日も、感じるがままに弾いてみようと思います。

昨晩はプロデューサーからもねぎらいのメールが入りました。それですっかり気をよくした私です。それでは、初仕事に出掛けて来ます。