制限時間

しまなみに暮れゆく夕陽を眺めながら、私の心には久しぶりに音楽が溢れていました。裏を返せば、4週間ほど意識的に音楽と距離を置いていたわけですが、時に餓えるまで待つことも、情熱を長く保つ上で有益なのです。

エレクトーンを学んでいる皆さんは、そろそろコンクールシーズンに入り、エントリー曲の準備に明け暮れていることと思います。

選曲はひとそれぞれ多岐に渡るのでしょうが、多くの人が頭を悩ませるのが、演奏の制限時間です。

例えば、ジュニアの中学生部門に出場する場合、自由曲の演奏時間は5分以内と定められています。タイムオーバーは厳しく減点されるので、時間内におさめなければなりません。

選んだ曲の長さが時間内であれば特に悩む必要はありませんし、ポピュラーやジャズなどの曲ならば時間調整は比較的容易ですが、クラシックの場合はいささか厄介です。

クラシック作品は、原曲の構成や響きまでを含めて認知されていることが多いので、原曲のニュアンスを活かした演奏をしようと思えば、できるだけオリジナルスコアに忠実なアプローチが求められます。

しかし制限時間におさめるには、曲を部分的に割愛して演奏しなければなりません。例えば、全編を見たことがある映画のカット版を見ると、「なんでここがないの」といら立つことがありますが、よく知られたクラシック作品をカットして演奏すれば、聞き手に同じことを感じさせてしまいます。

そのダメージを最小限に抑えるには、慎重にカットしなければなりません。

よく、練習を始める前から、あらかじめカットして編曲するケースがありますが、それはあまり感心しません。やはり、ざっくりとでもいいので全曲を弾いてから、改めてカットすることを勧めています。

最初は好きでない部分が、後から好きになるかもしれませんし、曲をよく理解しない段階で「ここは不要」と思った箇所でも、理解するにつれて「やはり必要だった」と気付くこともあります。

でも、それよりも大切な理由は、全編を理解せずに切り貼りした編曲は、結局のところつぎはぎでしかなく、作品のエッセンスを濃縮したことにはならないからです。

考え方としては、「10分の曲を5分にカットする」のではなく、「10分の内容を、5分で表現する」という感じでしょうか。

さらに起承転結を持たせ、聞いていて自然で心地よいまとめ方をするのは、一から編曲するよりも難しいことかもしれませんが、見事に完成した時には、複雑なパズルを解いたように爽快です。