雨の神戸から「さくら」に乗って

昨晩の明石リサイタルでの感慨がまだ濃密で鮮明なままに迎えた朝。神戸の街はやわらかい雨に濡れ、どこからともなくショパンが聞こえてくるかのようでした。

朝食の後、神戸の親友がホテルから新神戸駅まで愛車で送ってくれることになって、山口や新潟の皆さんと名残惜しくお別れし、ホテルを出発しました。

新神戸からは今月お目見えしたばかりの九州新幹線「さくら」に乗車。新神戸駅ホームの発車案内表示に「鹿児島中央」と書かれているのを見て、とても新鮮に思いました。

このまま乗っていれば、博多や熊本、薩摩川内まで連れて行ってくれるのかと思うと、わざと乗り過ごして九州を目指したくなってしまいますが、今日もまた私のレッスンを待ちわびてくれている子のところに向かう道中です。

わずか一駅、岡山で下車し、瀬戸大橋を渡って香川に行きました。もう見慣れてきた橋からの風景ですが、曇り空に溶け込む薄墨で描いたような表情は新鮮でした。

今日レッスンをする子どもたちもまた、昨日の明石リサイタルを見に来てくれていました。私が日頃、稽古中に言葉で伝えようとしていることは、昨日のステージからも一目瞭然だったとみえ、今日のレッスンでは第一音目から冴えた音楽を聞かせてくれました。

人気者になるよりも大切なこと。弾く歓びを聞き手の歓びと響き合わせるために心掛けること。そして平常心を保ちながら魂を込めることなどなど。口で説明してもイメージしにくいことを直感してもらうには、舞台で背中を見せるのが一番です。

そして私自身の反省点を隠さずに打ち明け、私が今回学んだことについて早速伝えました。

正直、昨日の演奏会はいつも以上に体力を消耗しました。心身ともに疲れ果て、今日は一日眠り続けたい心境でしたが、気持ちを振り絞って稽古にのぞみました。

エネルギーが底をつきそうでも、子どもたちの生き生きとした表情を見ていると、またエンジンが回り出します。

それも終わり、今日の宿に落ち着いた今、ちょっと抜け殻のような状態に。さて、明日は明日で試練が待っています。力強く挑むためにも、今夜こそは眠らせて下さい。