バクマチックシンドローム

今日はほとんど丸一日「幻想行進曲/幕末」の稽古に明けくれました。

編曲からデータ作成までに、かなりの時間を費やして仕上げたのですが、弾いているうちにどんどんイメージが膨らんできて、データの細かい手直しが続出。

とにかく音数が多く、手が休まる暇を与えない作品ですが、石田ワールドともいうべき複雑な和音構成なので、ほとんどの音符に臨時記号が付いていて、ちょっと気を抜くと、何を弾いているのかわからなくなってしまう恐ろしい曲です。

石田先生の和音や旋律は、極めて丁寧に扱うことを求められているように感じるので、ひとつひとつの響きを確かめて、和音の構成音のうち、いずれの音を強く出すべきかなど、ただ正しい音を弾くのではなく、響きのバランスを整えるのに苦労しています。

更に注意を要するのは、次第に曲が盛り上がって、気持ちが前に向いてきても、西洋の曲のようにストレートな感情表現をせず、高度に抑制をきかせたコントロールをしなければならない点です。

この曲が内包する情熱や情念は、理性、あるいは宿命的なものと紙一重の形で表現されるべきだと思うので、他の曲とはアプローチがまったく異なります。

最初にこの曲を頂いた時は、「複雑だな」というのが第一印象でしたが、弾けば弾くほど、魅力が深まって来て、「石田先生、すごすぎ!」と、ひとり感激を新たにしています。

歴代の名作がそうであるように、音楽を通じて風景が見え、曲に描かれた精神性が私の身に乗り移るような感覚があります。

さて、ステージではどんな演奏になるでしょうか。まだ本来の魅力の半分も表現できていないので、もっともっと磨きを掛けなければなりませんが、時間の限りチャレンジしたいと思います。