霞町音楽堂「奇跡のコンチェルト」シリーズ第7回は、上質な温もりに包まれる特別な公演となりました。前夜に宣言した通り、「リハーサルで感じた喜びをお客様と共有する」との約束を果たせ、たいへん満足しております。
今回のメインディッシュはシューマン作曲のチェロ協奏曲。秘めた情熱が殻を打ち破ることはなく、迷いや苦悩を彷徨いながら希望をみつけようともがく。私にはそのように映る作品でした。
写真で言えばソフトフォーカスの掛かった風でもあるのですが、決してファンタジーではなく、むしろリアル。誰の心にもある人間の葛藤が、等身大のことばで綴られているかのようなのです。
つまり、作為的な見せ場が設けられていないので、演奏には極めて高度な精神性が必要なわけですが、海野さんの見事な演奏設計には、終始心を奪われっぱなしでした。
私が受け持つ管弦楽パートには、大きく分けると、ソリストのモノローグを静かに見守る場面と、対話をする場面があります。そして、対話の中にも、向き合っているところもあれば、手紙のように距離や時間に差のある雰囲気のところもあり、それぞれに適した表現が求められます。
海野さんはその舵取りが極めて明快であるだけでなく、こちらの生理をきちっと受け取った上で提案して来るので、なんとも波に乗りやすいのです。
それを顕著に実感したのは、ソリストとの対話を離れて、管弦楽のみの部分に投げ出された時。まだこの作品を消化できていない私はたちまち混乱し、体勢が崩れる体験をしました。今回の演奏は海野さんの水先案内あっての成功でした。
それでも、海野さんとの共演の手ごたえは大きく、今後もさまざまな展開が期待できるでしょう。
シューマンの協奏曲に先立って、海野さんはバッハの無伴奏組曲を弾いてくださいました。貴重なガット弦から放たれる音色は、独特の味わいがあり、お客様もスタッフも一音たりとも聞き逃すまいと耳を傾けながらも、うっとりとそのリズムに乗って楽しんでいるようでした。
海野さんはトークもまた素晴らしく、私が口を開くまでもないと思うほどです。数々の嬉しいお言葉をいただきましたが、「電子楽器であるかは関係ない、そこに呼吸があって、音楽をしているかどうかだ」と言ってくれたことは、30余年のコンプレックスにひとつの答えを見出すに至りました。
鳴り止まない拍手。お客様の晴れやかな表情。奏者自身の達成感。これほどの素晴らしい世界でありながら、お客様にはまだまだ知られておりません。
今回は海野さんのお声がけが功を奏し満席となりました。客席はいつもより音楽色が濃く、私の緊張は少しばかり増加しました。海野さんの顔を潰すわけにはいかないからです。
しかし、終演後には皆さまから親しく声を掛けていただき、エレクトーンにも大きな興味を示してくださいました。エレクトーンを近くで見ようと、ステージ前に皆さまが集まり、STAGEAも今宵ばかりはアイドル気分だったことでしょう。
一方で、私のお客様はあまり多くなく、エレクトーンを嗜む方のご来場はまったくありませんでした。もはや、エレクトーンの方々にとって、私の活動は無意味なのかもしれません。たとえそうであっても、この営みがエレクトーンの価値を高め、エレクトーンを愛する皆さまに誇りと感じていただけるまで、継続してまいります。









