北海道から戻って、私の体調はいよいよ厳しくなりました。8月は趣旨のまったく違う公演が続き、それぞれに多くの準備が必要ですが、効率が上がらず遅れに遅れてしまっています。冴えていれば1時間で終わることに半日以上を要するなど、気の滅入ることばかり。
それでも諦めてしまったら終わりです。どんなに歩みが遅くとも、止まっているのとは違いますし、これが序走となってにわかにペースが上がるかもしれません。ひたすら努力するのみです。
7月29日はふたつのリハーサルがありました。宇部に向けて清水理恵さん今井俊輔さんとの合わせ。そして、大分での廣津留すみれさんとの合わせです。貴重な時間を割いて集まってくれるアーティストに対し、万端でなくとも、せめてリハーサルの体をなすまでの準備は整えなければなりません。
宇部公演の第一部は「椿姫」のハイライト。大胆にカットしているとはいえ、65分ほどのステージとなる予定で、私はその間、全体を整えながら解説と演奏を繰り返す役割を担います。となると演奏ばかりに気を取られているわけにはいかないどころか、無意識で弾いていられる域に持っていっておく必要があります。
事前のリハーサルは、それをシミュレーションできる唯一の機会。そういう意味では、調子が悪く意識も朦朧とする中で弾くことで、怖いものがなくなりました。
余談ですが、ヴェルディの作品には、シンプルな刻みパターンが多く散在します。30代の頃はこれが退屈に思え、40代になると典雅に弾けない自分が嫌になり、50代に突入した時はさまにならないことで怖く感じていましたが、今やっと馴染んで来た実感を得られるようになりました。これも前進の証かもしれません。
さて、廣津留さんとのリハーサルは予想外に楽しくなり、久しぶりに心が軽くなりました。多忙なすみれさんとは、なかなか腰を据えて相談する機会が持てず、公演一週間前にして曲目未定の状態だったのです。
候補の曲目を数十曲用意し、初見で合わせながらツボるものを選びましょうということになっていたので、すみれさんに似合いそうな曲から次々弾いてみたのですが、どれもこれもいい感じで、あっという間に公演数回分のレパートリーができました。
ここからの細かい調整やパート譜の作成、そして何より肝心な自信を持って人様にお聞かせするに足る演奏になるまでの稽古を思えばまったく気は抜けませんが、目処は立ちました。もう調子が悪いとは言っていられません。弾き続けて6時間分の曲目を3日間で仕上げるため、慌てず落ち着いて、でも急いで取り掛かります。
8月3日は待ちに待った茨木公演。そのリハーサルは7月25日に東京でやりましたが、内容に即興的な部分が多くもう少し詰めておきたいということで、前日に現地付近で2度目のリハーサルを組むことになりました。
しかし、エレクトーンがあり、太鼓を持ち込める場所は見つかりません。困っていると、姫路労音が場所を提供してくれることになり、大助かり。大阪を通り越して姫路まで行くと交通費はかさみますが、異常に高い大阪のホテルから姫路のホテルに変えたら宿泊費は3分の1になり、一石二鳥です。
こうして姫路労音の全面的な協力により、全員でのリハーサルをじっくりとやって、温泉とサウナ付きの宿で疲れを癒すというご褒美付きプランになったわけですが、私はギブアップでひたすら休息。本来なら、出演者を引き連れて姫路の味覚を大盤振る舞いしたいところ、交流時間を持つこともできませんでした。でも、このメンバーならすでに心は通じています。
こうして一週間の旅が始まりました。





